”血液透析” AVGとは? Vascular Accessの基礎(第二弾)
こんにちは、CE ガッチです。
最近ブログを始めたせいなのか、パソコンのキーボードがとても気になってます。
より打ちやすいキーボードを求めて、日々Ama〇onで探していますがどれがいいのかよくわかりません。何かおすすめがありましたら教えていただきたいです。
どの様にしたらよいか、判断基準とかもあれば知りたいです。
気軽にコメントへ書いていただけると嬉しいです。
さて、前回に引き続きVascular Access:VAについて書きたいと思います。
本日の内容は「人工血管使用動静脈瘻:AVG」についてです。よく「グラフト」と呼称されているものです。
それでは、宜しくお願いします。
人工血管使用皮下動静脈瘻:AVGとは
まずはAVGとは、そもそも何なのかを復習したいと思います。
AVGとは、
になります。
AVGの方はシャント肢を見ると特徴的で、AVF(自己血管使用皮下動静脈瘻)と比べて肥厚や瘤形成が基本的にはないと思われます(ある方もいます)ので、皮下に留置してある人工血管がきれいに見てとれます。
きれいな輪を描いていたり(ループ形)や前腕から真っ直ぐ上腕にかけてバイパスしていたり(ストレート型)します。
看護roo!さんに良い画像がありましたので、引用させていただき以下にその一例をしまします。
引用:バスキュラーアクセスの種類と特徴|透析ケア|看護roo![カンゴルー]
経験上、留置はやはり非利き腕の前腕ループが多い気がしています。
しかしながら、最近前腕から上腕へ掛けてのストレートグラフトも増えてきています。
おそらくその時期により先生方の流れがあるのかなとも考えられます。
勿論、前腕だけではなく上腕の方もいらっしゃいましたし、大腿部にいれている方もおられました。
適応は?
あくまで内シャント作製の第一選択は「自己血管使用皮下動静脈瘻:AVF」になります。
では、AVGの患者さんはどのような方でしょうか?
AVG適応の方は、
になると考えます。
また、絶対条件として心機能に問題がない(シャント作製に耐えられるかを事前評価が望ましい)ことが必要です。
心機能に対して明確な数値等はないと思われますが、日本透析医学会 「2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」には以下のように記載があります。
第4章 バスキュラーアクセスの日常管理 (4)心機能とアクセス GL-1
動静脈を短絡するVA(AVF・AVG)は心機能に影響を及ぼす。VAの動静脈短絡量が心機能(心予備脳)に比べて過剰である場合、心不全が出現することを認識すべきである。
(解説抜粋)新たにAVF・AVGを作製すると、心拍出量に対し末梢血管抵抗が低下し、心臓が心拍出量を増加させることで血圧を保ち、末梢循環を維持する。
短絡量が心臓の予備能(最大心拍出量)に比して相対的に大きい場合、シャント血流の増加に心拍出量の適切な増加が困難となり、全身循環が阻害される循環障害系の心不全が発症する。
また、シャント血量が多い状態が持続することで(貧血や甲状腺機能亢進症に認められるような)、高心拍出量性心不全を呈する。
この心不全も心機能が低いほど発症しやすい。
AVGの作製には、上記の事を踏まえシャント作成時での心予備能を推測し、どの程度のシャント血流量を得られるか等を予測しながら作成を行うという事ですね。
動静脈の短絡は、人体にとっては非生理的なことです。
短絡により、一部の血液が短絡ヶ所より末梢側を経由せずに心臓へ戻ります。つまり、血液が戻りやすくなり、末梢血管抵抗の低下へとつながるわけです。
血圧は心拍出量×末梢血管抵抗で表すことが出来ます。
上記の式から、末梢血管抵抗が低下したという事は、血圧を保つために心拍出量を増加させなくてはいけないわけです。
心拍出量が増加するという事は還流量が増加、受け皿である右心系への負担が大きくなり、結果的には許容を超えてくる又は常に高還流にさらされることで心不全を呈しやすくなるという事になります。
AVGの適応は、血管の荒廃や穿刺困難等の二次的要素が多いです。
しかし、導入年齢の増加や患者の高齢化が進みAVGの患者さんが増加しているのも事実です。
今後は患者ケアも含め管理しなくてはいけない世の中になりそうです。
素材
現在、日本にて使用可能な人工血管の素材は以下の3種類があります。
挿入する主な人工血管のサイズは、
1、直径が5mmもしく6mmのストレートグラフト
2、動脈側4mm、静脈6mmもしくは7mmのテーパードグラフト
です。
それでは次にそれぞれの特徴を個別にみていきたいと思います。
e-PTFE(Expanded-polytetrafluoroethylene)
e-PTFEは、テフロンを熱を加え伸展加工し作製される人工血管です。
抗菌性や長期開存性、操作性において優れていることが報告されています。(1)
PU人工血管と比較をしても開存率は良好であったという報告もあります。(2)
しかしながら、血管壁からの血清漏れにより生じる血清腫が術後約5%の頻度で出現します。
現在では、血清種のリスク減少の為コーティングがされたものも発売されています。
穿刺開始に関しては、術後2~3週間を必要とします。
これは、人工血管が周囲の組織としっかりと癒着をしてから穿刺を行わなくてはならないからです。
e-PTFEは自身での止血機構を有さないため、組織との癒着をし始めて止血機能が働きます。つまり、穿刺はできても止血が難しくなってしまうからです。
エコーでの観察も早期から可能になり、血管壁もしっかりと描写されます。
PU(Poly-urethane)
PUは3層構造を有していて、その中層に弾性による止血機構(セルフシーリング機構)を有しています。
このため、挿入後早期に穿刺が可能です。
しかしながら、他と比較するとその固さのために屈曲がしやすいというデメリットがあります。
エコーでの描写に関して、挿入早期では難しいことが多いです。
これは、三層構造中の外膜にあたる部分が早期癒着を目的とした多孔質構造をしている為、空気を含んでしまっていることに起因します。
穿刺を繰り返すことにより、癒着が進み描写が可能になってきます。
PEP(Polyolefine-Elastmer-Polyester)
PEPもPU同様に3層構造を有しています。
また、セルフシーリング機構も有している為、癒着を待たず早期の穿刺が可能になります。
エコーに関しては、早期から観察が可能なことが多いです。
これら3種類の特徴を表にしたものが看護roo!さんのHPにありましたので引用させていただきます。
消毒に関して
皆さんのご施設では、人工血管の消毒にはどの薬剤を使用していますでしょうか?
自施設では基本的にはポピドンヨードを使用し、どうしても皮膚に合わない患者さんの場合は0.5%クロルヘキシジン含有アルコール製剤を使用しています。
消毒法に関しましては、様々なご施設の考えや医師の考えがございます。
自身も患者の皮膚状態や合う、合わない等により使い分けをしています。
消毒に関しましては、興味深い論文もございましたので紹介します。
「府川真理子 操華子:バスキュラーアクセス部に使用されている皮膚消毒剤の実態ならびにその選択の関連要因 (日本環境感染学会 会誌 Vol30 no2 2015)」
興味ある方は読んでみてください。
まとめ
今回はAVGに関して、基本となることを書かせていただきました。
特徴がわかれば、対処がしやすいこともあるかと思います。
管理も基本は理学所見であり、日々の観察になります。
色々と書かせていただきましたが、参考にしていただけますと幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
CE ガッチ
参考文献
・1)久保田和丘・川村明夫:人工血管の選択と新素材、透析患者の合併症とその対策(日本透析医学会 合併症対策委員会編17:41-47 2008)
・2)柳清 洋佑 ほか:当院における早期穿刺可能な透析用人工血管の開存成績比較:SHORATEC® vs. ADVANTA®(日本血管外科学会 会誌 20 1-6 2011)
・社団法人 日本透析医学会:2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン
・公益社団法人 日本臨床工学技士会 「専門臨床工学技士テキスト 血液浄化編 第9版」
参考HP