CEガッチと愉快な仲間たち

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某病院で臨床工学技士として働くガッチの疑問と私見

”血液透析” VAカテーテルとは? Vascular Accessの基礎(第四弾)

こんにちは、CE ガッチです。

 

いつも本ブログを読んでいただきありがとうございます。

ここ2,3日の天気が悪く家に引きこもってます。

これから心機一転と思い、自分の部屋を模様替えしてみたのですが、少し配置に失敗をしてイスの動ける範囲が狭くなり若干不快になりました。

また少し考えてみようかな思います。

そして、部屋配置の変更に伴いPC周りも新しいものが欲しくなってきました。

普段はノートPCで記事を書いたり仕事をしているのですが、もう少し割けるスペースが出来てきたわけです。

新しいモニター・キーボード・マウス・PC本体と夢が広がります。

そのうち執筆に関するものに関しても、記事書いてみたいです。

 

さて、今までの記事の流れからきまして、本日は皆様の想像通りの内容になります。

VAの分類で最後にはなるのですが、「カテーテル」について書いていきたいと思います。

留意事項

本日は、基本的に長期留置カテーテルと言われている「カフ型カテーテル」について記載いたします。

非カフ型カテーテルの記載する場合は、「短期留置型~は、」もしくは「非カフ型~は」と記載いたします。

ご了承の程、宜しくお願い致します。

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VAとしてのカテーテル

カテーテルには、長期留置を想定した「カフ型カテーテル」もしくは「自然抜去を阻害する構造を有するカテーテル」と、また長期での留置を想定していない「非カフ型カテーテル」の2種類に分類されます。

適応から留置部位・管理に関して、少し復習していこうかと思います。

適応

適応に関しては、このように記載があります。

GL-3:カフ型カテーテルの適応は、①AVF・AVG増設不能例、②高度の心不全症例、③四肢拘縮、認知症などによる穿刺困難例、透析中の事故抜針リスクの高い症例など患者病態から本法が最も適切なVAと考えられる症例、④小児の血液透析例などである(2-C)

引用:日本透析医学会 2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン 第3章 (5)

VAとしてカフ型カテーテルを使用する適応は上記であり、アクセスとしての最終段階と思います。また、慢性血液透析においての非カフ型に関しては、主に移植や内シャント作製までのブリッジ的な使用になります。

前者での基本適応は、

表在静脈や深部静脈の荒廃により、AVF・AVGの作成が困難な場合

です。

動脈表在化に適応は似ていますが、この場合は返血に使用できる表在静脈が存在するかしないかがカフ型カテーテル留置と動脈表在化の別れ道となります。

ざっくりしていますが下記のようなフローになると思います。

 

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短期留置等のブリッジ使用はこの限りではありませんが、まず作製可能であれば動脈表在化が優先されます。どうしても穿刺困難や血管の荒廃があるとの医師の判断にて、最終段階であるカテーテル留置になります。 

そして、もう一つ重要な適応があります。

それは、小児領域において体重20kg未満でのアクセス選択は、カテーテルも前向きな選択肢になるという事です。

通常AVF作成には2.5mm以上の径が必要となり、目安となる体重も20kg程度以上とされています。

この事から、作製がとても困難である場合もある為カテーテルが前向き検討となるわけです。(こちらもブリッジとしての使用分類になると考えます。)

 

挿入部位

日本透析医学会による「2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」には下記のように記載がされています。

穿刺目標となる第一選択は右内頚静脈であり、患者の状況により左内頚静脈、右大腿静脈、左大腿静脈も選択肢となりえる。

ただし腎臓移植が予定されている患者では腸骨静脈狭窄を生じさせないため、大腿静脈からの挿入は避けることが望ましい。

引用:日本透析医学会 2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン

 という事で、第一選択が右内頚静脈となり、場合によっては逆もしくは左右の大腿静脈が選択されるという事になります。

自身の経験している10年間のうち、長期で留置されている患者さんで大腿静脈に留置されていたのは1名しかおりませんでした。

少し極端かもしれませんが、長期に関して基本右内頚静脈と捉えてよいかと思います。

 

挿入法

カテーテル挿入に関しては、セルジンガー法が基本になります。

セルジンガー法は、ざっくり説明しますと

外筒付きの針にて穿刺→内筒を抜きガイドワイヤーを挿入→ワイヤー挿入後外筒を抜去→ワイヤーに沿ってカテーテルを挿入→ワイヤーの抜去

です。

YouTubeに実際に挿入している分かりやすい動画がありましたので、参考として下記にリンクを貼っておきます。

ご参照ください。

https://www.youtube.com/watch?v=5Y6ns9-Gu4o

 

カテーテル留置部位

 VA用に主に用いられるダブルルーメンカテーテルは構造として、脱血側はプロキシマール側(近位)であり送血はディスタール側(遠位)となります。

また、カテーテル留置部位に関して日本透析医学会による「2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」には下記のように記載がされています。

カテーテルの先端位置は留置後確認する。

右内頚から挿入の場合、非カフ型であれば右上大静脈内、カフ型であれば脱血側は右上大静脈内、返血側は右房近傍に位置させることが望ましい。(2-C)

さらに留置一定期間後、先端位置の再確認も必要である。

引用:日本透析医学会「2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」第5章(5)GL-2

 またカテーテル先端位置はカテーテル機能を決定する重要な要素であるとの記載もあり、留置位置はその患者さんの透析の質に直結する事となります。

 

実際に用いられるカテーテルの例

・テシオカテーテル(カフ付)2本のシングルルーメンカテーテル

 

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引用:株式会社 林寺メディノール・株式会社 ハヤシデラ

挿入イメージはこちらです。

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引用:株式会社 林寺メディノール・株式会社 ハヤシデラ


 画像引用:株式会社 林寺メディノール・ハヤシデラ | クオリティライフを応援します。

 

・ショーンカテーテル(カフ付)ダブルルーメンカテーテル

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引用:東レ・メディカル株式会社

画像引用:バスキュラーアクセス関連製品 | 製品情報 | 東レ・メディカル株式会社

 

・セントロスフロー(カフ付)ダブルルーメンカテーテル

此方は先端形状が特殊になっており、血管へのへばりつきをしにくくしております。

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引用:メリットメディカル・ジャパン株式会社

上記はVAとして使用されているカフ付カテーテルの一部になります。これら以外にも非カフ型を含めれば多様なカテーテルが存在します。

 

合併症

まず、カテーテルを挿入するにあたり、どの様な合併症があるのでしょうか?

留置期間で考えると、日本透析医学会 「2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」での推奨日数として非カフ型は3週間程度、カフ型はそれより長期となっています。理由としては、中心静脈狭窄の原因となる為です。ですので、3週間程度といえど非カフ型においてはなるべく短期間での留置が望ましいです。

またKDOQIでは、非カフ型に関しては入院患者に限るべきであり、その期間は1週間以内であるべきとしています。

それでは、留置後の合併症は何があるでしょうか?

大きく分けると、

①脱血不良 
②感染

です。 

 

①脱血不良に関しては、血管へのへばりつきやカテーテル内の血栓形成・カテーテル周囲の血栓・フィブリンスリーブ・カテーテル先端の血栓形成があります。

へばりつきに関しては、体位であったりカテーテルの位置調整で改善したりするのですが、血栓に関してはそうもいきません。

これを防ぐために、基本的にはヘパリンでカテーテル内を充填していると思います。

しかしながら、それでも血栓は形成されてしまう場合があります。

そのような場合は、ウロキナーゼを充填し血栓を融解させる等の処置が必要になります。

ただ、ウロキナーゼの頻回使用は菌血症の発生率が高いとの報告もありますので、毎回の充填ではなく適宜の使用が良いかと思います。

 

②感染に関しては、出口部・トンネル・カテーテル内の3つの大別されます。

簡単ではありますが、いかにそれらを記載します。

出口部感染

出口部というのは、文字通りカテーテルの挿入部にあたります。

挿入部の発赤や膿、腫脹などです。

これらは抗生剤入りの軟膏を使用した局所的処置や、抗生剤の内服で対応されます。

トンネル感染

トンネル部というのは、挿入部からカフまでの範囲にあたります。

皮下トンネル部に、発赤や腫脹・硬結・圧痛が生じ、これらは通常出口部感染も伴います。

カテーテル内感染

カテーテル内感染というのは、カフ部より内側の感染になります。

カテーテル内が感染しますと、発熱や悪寒等の症状が出現してきます。他の重症な感染症の原因にもなりえる為、それらに対応する抗生剤治療やカテーテルの抜去・交換という処置に至ります。

 

 上記を防ぐためには、適切な消毒・管理が必要になります。

大まかにではありますが、最後に消毒・管理について記載します。

 

消毒・管理について

カテーテル挿入部の消毒薬に関しては、CDCのガイドラインやK-DOQI2006にてクロルヘキシジンアルコール液が推奨されています。

濃度は様々なガイドラインにて何種類か推奨がありますが、基本は0.5%以上のグルコン酸クロルヘキシジンを使用するよう推奨されています。

出口部を清潔に保つことは大変重要です。

透析毎に浸出液の有無や発赤・腫脹・疼痛・かゆみ等の確認を行い、重大な感染や合併症を生じる前に対応が出来ればと考えます。

また、患者さんへの確認や出口部の保護などの対策を立て、施設ごとの感染に対するサーベイランスの実施が推奨されています。

 

まとめ

 

 以上、主にカフ型カテーテルの適応・種類から管理までをずらっと記載させていただきました。

実際のカテーテル管理・処置に関しては、シャントの管理同様施設により違いが大きい部分だと思います。

しかしながら、そのような中でも基本をしっかりと学び考えながら行うか、そうでないかでは大きな違いが生じてしまいます。

本日の内容が、読んでくださる方のためになれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

 

CE ガッチ

 

参考文献:

・ 日本透析医学会 2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン

公益社団法人 日本臨床工学技士会 専門臨床工学技士テキスト 血液浄化編 第9版

・CDC ガイドライン 2011 「血管内カテーテル関連感染防止」

www.cardinalhealth.jp

参考サイト:

・医療法人 心信会 池田バスキュラーアクセス・透析・内科

www.fukuoka-vaccess.jp

・看護roo!

www.kango-roo.com