CEガッチと愉快な仲間たち

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某病院で臨床工学技士として働くガッチの疑問と私見

”血液透析” 圧力の考え方 静脈圧編

こんにちは、CE ガッチです。

 

ここ数ヶ月「テレワーク」という言葉がたくさん聞こえてくるようになりました。

メーカーの方も病院への訪問規制により、待機業務が多くなり段々とテレワークへ移行しているという事も聞いております。

医療は対面にて患者の表情や症状を確認しながら行っていくと思っているのですが、在宅透析などはその場で対処することが難しいこともありテレビ電話(Skype等)などで対応することもあるという事です。

将来的に在宅での医療が進む(遠隔での医療が進む)時、自分たちはどのように働いていくのか。

時々考えてしまいますね。

 

さて、本日は透析中の圧力に関する考え方から関連する警報について考えていきたいと思います。

圧力に関して、「これだからこう!」を考えられるようになると患者さんへの「こうしてね」を理論的に説明しやすくなります。

他、OHDFでの考え方等にも使えますので是非考えてみてもらえればと思います。

では宜しくお願いします。

 

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イラスト引用:看護roo!

 

透析に関わる圧力

透析に関わる圧力には何があるでしょうか?

静脈圧

透析室で勤務をしていて一番目にするものは「静脈圧」ではないのかなと思います。

警報でも一番鳴動回数が多いのではないでしょうか?

圧力の動きも多く、穿刺部や体位などとの連動性も高いので血液透析に従事するのであればしっかりと理解をしたいです。

透析液圧

次に目にするのは「透析液圧」だと思います。

透析装置のメーカーにもよるとは思いますが、装置の画面ではだいたいが静脈圧の隣に表示されています。

このあたりから少し対応があやふやになってきます。

今となっては恥ずかしい話ですが私は2、3年目の頃、透析液圧の警報が鳴った際の対応に悩んだ時期がありました。

透析液圧ってダイアライザー関連だから触れないじゃんと。

もちろんそうですが、場合によっては違う事もあります。ややこしいですね。

動脈圧

そして「動脈圧」

メーカーによって「動脈圧」や「PBI」と若干名称が異なることもありますが、基本的には同じ位置で測定をしているはずです。

動脈圧は「TMP」(膜間圧力差)をより正確に測定するためであったり、後希釈の血液濃縮具合の簡易的な把握や脱血状態の把握に使用されていると思います。

勤務されている施設によっては、動脈圧をモニターしている施設としていない施設もあります。

勿論あるに越したことはないのですが、少し前の機種になるとメーカーによってはオプションであったりするという事もありました。

上記の理由から結果的にコスト的に省かれてしまっている場合もあります。

ですが、とても大切なモニター項目です。

TMP(膜間圧力差)

最後に、少し出てきていましたが「TMP」(膜間圧力差)です。

HDFではおなじみです。2012年の診療報酬改定以降HDFが大幅に普及してからよく聞くようになりました。

膜の経時劣化に関わる事象や低分子蛋白の除去に関わってくる圧力です。

 

すべてについて詳細を記載しますとすごいボリュームになりそうなので、本日は「静脈圧」について書いていきたいと思います。

静脈圧

透析装置で測定している静脈圧は、名称の通り

「静脈側回路で測定している圧力」

です。

測定位置

測定位置は、回路の静脈側エアートラップチャンバ(以下Vチャンバ)です。

少し詳しく書くと、Vチャンバの圧力モニターラインからトランスデューサ保護フィルタを介し、装置受圧口に接続をして測定しています。

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 どのような圧力を見ているか

Vチャンバにはどうのような圧力がかかっているかを一緒に考えてみましょう。

 

留意事項

本記事は大きく影響のある圧力に関して考えています。

実際は、血液粘性や回路抵抗・ファウリング等の影響も考えられますが今回は省いていますので、ご了承の程、宜しくお願い致します。

 

①フィルター出口からVチャンバへ流入する血液の圧力

影響するもの:脱血・ポンプ速度・Vチャンバーまでの回路状態

 

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つまり、脱血の状況に影響される圧力です。

この圧力は静脈圧の基本となる圧力です、この力がしっかりしていなければ圧力は掛からなくなります。

脱血が良好であれば流入する血液は保たれているので圧力はしっかりかかってきます、反対に脱血が悪い時は流入が悪くなり、圧力がかからなくなります。 

 

②Vチャンバからの流出圧

 影響するもの:①の因子・落差圧・チャンバー凝固・回路抵抗(折れ曲がり)等

 

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流出圧、つまりVチャンバーから流出する血液の力はチャンバーへのinの力と高さによる落差圧(力としては挙げていますが、基本的には透析中に変化があるものではないです)により規定されます。

そこに回路凝固などの抵抗が発生します。(Vチャンバー出口部までの範囲)

in側の力に変化がなければ、回路凝固により圧力は高くなる方向へ働きます。

 

③血管への流入抵抗

 影響するもの:①の因子・②の因子・患者体位・血管抵抗(狭窄や径)・カニューレ

        の状況(折れ曲がりや血栓、抜針等)等

 

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Vチャンバー出口から送血血管の状況を反映します。

血管への流入抵抗に関わるものは、基本的には穿刺・針先関連と体位がおおきな要因になってきます。

穿刺の際に細い血管へ穿刺した、穿刺の際に引っ掛かっている、血管確保が出来ていない、中枢側の狭窄等々です。

針先に関しては、凝血塊や抜針等が考えられます。

体位では腕を曲げていた、上腕をおさえていた等があります。

 

 圧力の変化を考察する

①・②・③の変化を考える

という事で前振りが長くなりましたが、Vチャンバーで測定している圧力は①・②・③の総和です。

次はどの場所の変化が生じるとどのようなことになるのかを考察したいと思います。

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流入圧の変化

 流入圧は静脈圧を規定する基本の圧力になります。

設定されたQBでの送血圧を基本としますので、ここが原因で大きくなること(静脈圧がかかりすぎる事)はないと考えてよいです。(厳密にいえばあるかもしれませんが)

つまり、この部分は圧力が小さくなることしかありません。

では、どのような状況で小さくなるのでしょうか?

前述の影響因子から考えてみますと、

1、脱血状態の不良

2、Vチャンバーまでの回路の折れ曲がりによる疑似的な脱血不良

3、Vチャンバーまでの回路凝固

です、何度も話に出しますがここの圧力が静脈圧のベースになります。

もし下限が頻発するような場合は、脱血状態や回路の折れ曲がりを疑ってみてください。

 

②流出圧の変化

流出圧に関しては、下げる因子がありません。(基本的には)

つまりここで異常がある場合は、圧力は上昇します。

原因としては、Vチャンバーメッシュ部での血液凝固です。

Vチャンバーでの血液凝固は、経時で大きくなるため急な上昇を伴わない場合が多い(凝血塊の飛んだ場合を除く)です。

これが原因での圧力上昇を認めた際は、クロットの状況を確認しながら回路交換などの対応を検討してください。

ここで詳しくは触れませんが、Vチャンバーでの凝固原因として抗凝固剤の選択や持続注入量不足・炎症反応による凝固亢進などが考えられます。

③送血抵抗の変化

送血抵抗も②同様、異常があった際は基本的に圧力が上昇します。

原因としては回路・血管・外筒留置位置・患者体位が考えられますので分割して考えたいと思います。

 

1、回路の異常

回路に関して、基本的には折れ曲がり(キンク)です。

気泡センサーや回路クランプ部でのキンク、時には患者さんの身体の下になっていたりもしますので確認してみてください。

 

2、血管の異常

血管の異常の場合は、基本的に穿刺部よりも中枢側に狭窄や閉塞が存在している場合に静脈圧が上昇します。

狭窄が生じている場合でも、圧の上昇が軽度の場合もあります。

この場合は、当該患者さんにおける同穿刺部位での普段の静脈圧を観察しながら、圧の上昇がないか・その患者さんの狭窄好発部位はどこなのという事の把握も大切です。

3、外筒留置位置の異常

 

頻回に目にする「針先調整するね」というものです。

血管の内膜剥離による偽腔に留置してしまった場合や径の細い部分への留置、内膜へのぶつかり、静脈弁への引っ掛かり等様々な原因があります。

自身の経験で、発生頻度としてはとても稀ですが、触知できないほどの細い血管に留置されてしまっていたりという事もありました。

これらに関して、手の間隔で針先の位置を調整することがスタンダードでしたが、現在はエコーを使用しての針先調整を行う施設が増えてきています。

エコーで確認をするメリットとして「可視化」があります。

今までは「たぶん細い血管に入っていた」、「おそらく弁に引っ掛かっていたんじゃない?」だったのが、「細い血管に入っていたから位置調整した」、「弁に引っ掛かっていたからぶつからないようにした」というように確定要素を含めるようになります。

私もエコーを使用していた経験がありますので、そのうち記事にしたいと思います。

 

4、患者体位

これは単純に「腕を曲げていた」や「腕を抑えていた」等、患者の体位起因する事象です。

どうしても横になっていたりすると腕は曲げたくなるものです。

あまりストレスにならない様、体位に気を配ってあげてください。

 

抜針事故

これまで、送血抵抗に関して上昇する原因を書かせていただきましたが、ただ1つ</u/>圧が下がる重大な事故があります。

それが、「V側外筒の抜針」です。

これは送血抵抗が下がる唯一の原因かと考えます。脱血が良好であった患者で急に静脈圧下限警報が発報した際は要注意ですので覚えていただければと思います。

しかしながら、このような患者さんに関してはある程度予測が可能なことが多いです。

シーネやグローブ、抑制などの予防措置を考慮されている段階と予想されますので、「もしかしたら」を頭の中に置いておくことが大切です。

 

まとめ

本日は透析に関わる圧力の簡易的な説明と、私の考える静脈圧の詳細を書かせていただきました。

普段、私が後輩に指導することをそのまま書いています。

不足があれば是非ご教示いただき、今後の指導にも活かしていきたいと思っております。

また、本日の内容は私の考えであり、これがすべてではないこともご了承ください。

圧力はすべてを複合した結果のみが画面に表示されていることが多いので、より細分化すると原因分析がやりやすくなります。

皆様のご理解の一助になれば幸いです。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

 

CE ガッチ