CEガッチと愉快な仲間たち

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某病院で臨床工学技士として働くガッチの疑問と私見

”血液透析” 圧力の考え方 動脈圧編

こんにちは、CE ガッチです。

 

いつも当ブログを読んでいただきありがとうございます。

 

透析医会から4/30付で「透析施設における標準的な透析操作と感染予防に関するガイドライン(5訂版)」が発表になっていますが、皆様目を通されましたでしょうか?

第5章のⅩ、「新興感染症として、COVID-19の対応もガイドラインに記載されました。

すでに読んでくださる皆様のご施設では、周知・徹底されているベーシックな部分ではありますが、このようにガイドラインとして記載されることでその管理の重要性を再確認しました。

また、透析医会では、他にも「新型コロナウイルス感染症に対する透析施設での対応について(第4報改訂版)」であったりと関連する様々な情報が公開されていますので、対応やプロトコル作成に困った際には見てみるととても参考になるかなと思います。

以下に透析医会のHPのリンクを貼っておきます。

 

www.touseki-ikai.or.jp

 

ご参考になれば幸いです。

他にも、国立感染症研究所にて濃厚接触に関する定義が4/20に更新されていたりします。

濃厚接触と判断する目安を「2メートル以内の接触」から「1メートル以内かつ15分以上の接触」への変更。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染者と接触した日の始まりを「発病した日」から「発病した日から2日前」に。

 

引用:積極的疫学調査実施要領における濃厚接触者の定義変更等に関するQ&A(2020年4月22日)

国立感染症研究所にも様々な情報が更新されています。

チェックすると良いかもしれませんね。

 

www.niid.go.jp

 

さて、前回はBSMにて目にする機会も多い「静脈圧」の関する私見と考え方について書かせていただきました。まだ読んでない方は下記から宜しくお願いします。 

 

ce-gacchi.hatenablog.com

 

前置きが長くなってしまいましたが、本日は前回の圧力の考え方の第二弾になります「動脈圧」に関して個人的な考え方と警報等の対応を書かせていただきます。

本日も宜しくお願いします。

 

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留意事項

本項は、動的動脈圧に関して記載を致します。また、因子に関しては大きく影響のあるものに限定し考えています。

実際は、血液粘性や回路抵抗・ファウリング等の影響も考えられますが今回は省いていますので、ご了承の程宜しくお願い致します。

 

動脈圧とは

動脈圧とは、

血液浄化療法における動脈側回路にて測定される圧力

です。

測定位置

一般的には、動脈側ドリップチャンバー(以下Aチャンバー)にある圧力モニタラインにて測定されます。

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動脈圧の測定位置

 ここで測定されている圧力が測定され、透析装置のモニタに表示されています。

 

どのような圧力をモニタリングしているか

それでは、実際Aチャンバーにはどのような圧力がかかっているのかを分けて考えていきたいと思います。

 

①Aチャンバーへの流入

 影響するもの:脱血状況・ポンプ速度・A側接続部からAチャンバーまでの回路状況

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流入

流入する圧力、つまり脱血に関する圧力になります。

脱血状態が良好であれば、ポンプチューブにはポンプのしごきと速度により相応の血液が充填されますので押し出す際に圧力が掛かってくることになります。(ポンプにおける血液充填速度に関して、厳密にはポンプスピード・ポンプセグメントや回路の弾性等が関係してきます)

しかしながら、脱血状態が不良であれば血液充填も不十分になり押し出した際にかかる圧力は低下します。

つまり押すものがなければ圧力は掛からないという事になります。

他にも、回路の折れ曲がりがあったりすると疑似的な脱血不良を引き起こし圧力は低下します。

 

そして、少し偏った考えになるかもしれませんが流入圧は個々の設定により規定された値をとると考えます。

これは、脱血具合やポンプ速度、血液粘性・回路コンプライアンス等により規定されるものであり、それ以上上昇することは基本的にはないです。

しかしながら、ではその値はいくつだと言われると「患者さんにより」となってしまします。

これは、患者さんによりHbであったりHctなどの値が違うのでポンプが同じ力で押したとしても若干の違いが出てきてしまうからです。

流入圧の変化に関しては基本低下しかしません。

低下した際はAチャンバーよりも上流側を確認すればよいのです。

 

②Aチャンバーからの流出圧

 影響因子:①の因子・フィルターへの流入圧・フィルター出口部の状態・透析液圧・Vチャンバーでの血液状態・Vチャンバー以降の回路状態・送血状況等

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流出圧

影響因子をずらっと記載しましたが、気が付きましたでしょうか?

勿論ではあるのですが、①でお話した流入圧が一定と仮定した際、Aチャンバー以降の回路状況すべてが流出圧に関係してきます。

これは、動脈圧が透析回路の圧力測定中で一番上流側にあるからです。

ですので、どうしても静脈系の圧が上昇すれば同じように上がってきます。

ただ、静脈圧モニタではどうしても反応しきれない部分があります。

それが、Aチャンバー出口部の凝固であったり血液濃縮・フィルターヘッダでの凝固などです。

上記の事もあり、流入圧が一定であれば流出圧は基本的に上昇しかしません。

つまり、動脈圧が上昇した際はAチャンバー以降の回路状態を確認すればよいわけです。

 

圧力の変化を考察する

①・②の変化を考える

という事で前振りが長くなりましたが、Aチャンバーで測定している圧力は①・②の和です。

次はどの場所の変化が生じるとどのようなことになるのかを考察したいと思います。

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流入圧・流出圧
 ①流入圧の変化

流入圧は前述したとおり脱血に関する圧力になります。

脱血具合やポンプ速度、血液粘性・回路コンプライアンスや回路状態等により規定されるものであり、基本的には一定です。

流入圧は脱血状態が良好であれば基本的には取りうる可能性のある最高値となりますので、変化は低下のみとなります。

では低下する際に考えられる原因は何でしょうか?

主だったものとしては、

・脱血不良(穿刺等の手技関連)

・回路の折れ曲がり(キンク)

です。

この中でもそのほとんどが脱血不良です。そして脱血不良の原因になるのが穿刺と血管狭窄です。

穿刺に関しては、

・そもそも血管が確保できていない

・外筒留置位置が不適切

・血管狭窄 等々

その患者さんの血管で考えられる可能性を探り、もし血管に関して何らかのトラブルがある場合にはVAIVT等の処置を検討するのが良いかと思います。

 

②流出圧の変化

流出圧に関してはVチャンバーの時と同様に、下げる因子が基本的にはありません。

つまり圧力は上昇する事しかなく、その原因は流出側にしかありません。

そして、流出圧上昇原因の中でも重要なのが血液濃縮での粘度上昇によるものです。

HDや前希釈HDFではほとんど起こることはありませんが、後希釈HDF時に効果を発揮します。

後希釈HDFは治療の構造上、初めに補液分を除水します。

自身の経験で2.4L/h程度の補液ではありましたが、通常除水に補液等量分の除水が加算されるために血液粘度の上昇から中空糸内のずり応力の上昇・ヘッダ流入圧の上昇を呈し、動脈圧が上昇するという事象を何度も経験しました。

上記の場合は血液凝固も呈しやすく、TMP上昇へも繋がってくる為注意が必要です。

また、これを防ぐために濾過量は血液量の25%程度との話もあります。

 

他にも、フィルター以降での圧上昇も動脈圧上昇の原因となりえますが、その距離感や間での圧力モニタリングもある為、動脈圧警報発報の前に静脈圧や透析液圧での警報が鳴動することの方が多いと思います。

 

まとめ

本日は、動脈圧の考え方について書かせていただきました。

動脈圧は施設によりモニタリングをしている・していないの違いがあり、していたとしてもただつけているだけというのも聞いたことがあります。

しかしながら、後希釈HDFを施行するためには前述のように必須のモニタリング事項でもあります。

本記事を読んでいただき、動脈圧モニタリングに関して改めて考えてもらうことができれば幸いです。

 

今後は、時事ネタをまぜながら書いていきたいとも思っております。

本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

 

CE ガッチ