”血液透析” 再循環て何?
こんにちは、CE ガッチです。
いつも当ブログを読んでいただきありがとうございます。
気づいたら前回から半月も時間が経っていました。
6月になり緊急事態宣言も解除され、少しずつ街に活気が出てきました。
しかしながら、私たちが備えるべきは第二波であり行楽ではないのが残念です。
早く仲間と外に出かけたいですね。
さて、本日はバスキュラーアクセス日常管理の中から「再循環」について少し触れていきたいなと思います。
再循環の測定には、特定の測定機器であったり透析装置が必要になってきますが利用できればとても有用です。
シャントの狭窄部位により得手・不得手はありますが、それらの特性も理解しながら今後のモニタリングに生かしてもらえればと考えます。
正直に、測定可能な環境であれば利用しない手はないです。
それではよろしくお願いします。
再循環とは
透析治療における「再循環」とは、
フィルターにて浄化された血液が何らかの原因により脱血側へ混入、再度フィルターにて浄化される現象
です。
文章ではとても表現が難しいので図も入れて例えを書かせていただきます。
狭窄等の異常がない血管は下記のイラストのようになります。
このように”100”の脱血があり、”100”の送血があります。
しかしながら、返血側よりも中枢側に狭窄が存在もしくは発生するとこのようになります。(少々強引な解釈です)
返血側よりも中枢側の狭窄により、合計”100”の送血はありますが”10”跳ね返されてしまいます。
この跳ね返されてしまう分が再度脱血側に乗り、改めて体外循環してしまう。
これが”再循環”です。
再循環はパーセンテージで表され、"脱血した血液"に”送血した血液”の何%が混入しているかを表しています。
上記のイラストでは、”再循環率10%”ということになりますね。
判断基準として、ガイドラインには下記のように記載があります。
2回以上の再循環率の測定で、尿素希釈法を用いた場合は15%以上、尿素法以外の希釈法を用いた場合は5%以上であればその原因を検索する必要がある。
引用:2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作成および修復に関するガイドライン(日本透析医学会 2011年)
再循環の発生は、透析効率に直結します。
上記のイラストでも浄化すべき血液の脱血は”100”のところ"90"しか脱血されていません。1分間で”10”のロスがあれば1時間で”600”のロスになり、標準的な4時間では”2400”のロスが発生することになってしまいます。
つまりその分浄化量が減少してしまうので、全身の循環を考えれば透析効率は下がります。
(採血結果での効率は逆に上昇することが多いです、これは再循環している血液を採血している為にBUNが過剰に低値となり前値との差異が大きくなってしまうためです)
発生原因 と対応
発生原因となるのは、主に
- 血管の狭窄
- 穿刺位置の選択間違い
- 脱血・送血の逆接続
です。
血管狭窄
何らかの原因にて送血血管の中枢側に狭窄が生じた場合、再循環が生じやすくなります。
はじめのイラストのような状態がですね。
しかしながら、狭窄部位が穿刺部間に生じている場合、送血に対する抵抗はないので基本的に再循環は発生しません。
この時、透析中は問題がないのですが走行によりRIが上昇したり、静脈側の穿刺困難があったりします。
また、脱血側の末梢側、つまり吻合部寄りに狭窄が生じている場合も同様基本的には再循環は生じません。
ご存じの通り、この時は素直に脱血が悪くなりますよね。
つまり狭窄の仕方によって再循環率も変わってきますので、狭窄があるというだけで再循環が発生するのではなく、部位まできちんとアセスメントを行い再循環の測定をしてみてください。
狭窄での再循環は、一本血管やAVGの患者さんが発生しやすいです。
鎖骨下での狭窄を繰り返すような患者さんでも、上行大静脈への合流するおおもとの血管が狭窄してしまうので再循環を生じやすい代表選手みたいになってしまいます。
プチ知識ですが、鎖骨下の狭窄を繰り返す方に関してはシャント肢の腫脹も見られますので観察を怠らないようにしたいですね。
また、一度狭窄をした部位は再狭窄を呈しやすいです。
つまり、狭窄にて再循環を起こす患者さんに関しては、治療後でも再狭窄にて再循環が発生するリスクが高い為サーベイランスとして再循環率測定を組み込むと良いと考えます。
狭窄の場合は、基本的にVAIVTによる治療となります。
きちんとアセスメントをしたうえで、関連病院又は自施設にてVAIVTを行ってください。
穿刺位置の選択間違い
AVFの場合、A側の穿刺位置を間違えることはそうそうないように思います。
しかし、返血部位の位置を取り間違えると再循環は発生します。
- 返血血管がどん詰まりになっていた。(閉塞していた)
- 深部への交通枝があり、その先が狭窄していた。
等々基本的に先のどん詰まりが原因にはなってきますが、穿刺位置が近い場合の外筒の距離等も原因となります。
他にも、静脈側の穿刺トラブル時に血管の攣縮を認める場合があります。
この際も疑似的な狭窄状態となりますので注意してください。
穿刺針の距離に関しては、
動脈側の穿刺針から5㎝以上離れた部位に静脈側の穿刺針の針先が来るように穿刺すれば、体外循環した血液の再循環を防ぐことが出来る。
引用:2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作成および修復に関するガイドライン(日本透析医学会 2011年)第4章(1)GL-2 解説
という記載もありますので、こちらを念頭に置きながら穿刺をしていただければと思います。
AVGの場合は、血流の読み間違いによる穿刺間違い時に起こります。
A側吻合部方面に送血をした場合、吻合部から流入する血流に乗り脱血側に流れてしまいます。
特にループ型の場合は、どちらが動脈との吻合部であるかをしっかりと確認してから穿刺してください。
逆接続
これは完全にミスから生じてしまうものですが、稀に見かけます。
上記のAVGの件もこれに含まれますね。
穿刺部はしっかりと確認したうえで接続してください。
これらの把握をするために、測定が可能であれば積極的に行っていくという事が大切になってきます。
次は、簡単にですが測定機器の紹介をしたいと思います。
測定機器
測定機器には、
①HD02(後継のHD-03もあり)
②DCS-100NX・DCS-200Si・DBB-100NX
③クリットラインモニター
があります。
HD02
ドプラを使用して血球等の動きをみます。
測定方式は希釈法を使用し、再循環を測定します。
測定の際は生食の注入をする手技が必要で、生食の入れ方により上手な測定が出来なかったりという事もあります。
この装置は再循環率の測定の他、実血流量もドプラを使用し測定することが出来ます。
DCS-100NX
日機装株式会社のDCS-100NXです。
この装置のBV計を使用し、再循環を測定することが出来ます。
日機装社のBV計が搭載されている装置であれば測定可能となっていますので、同社のDCS-200SiやDBB-100NXも可能です。
こちらの標準のBV計は”近赤外光”を用いて”濃縮法”で測定を行います。
実血流量に関して測定は可能ですが、血液ポンプ部の回路径からの算出になり個人的には参考値です。
オプション扱いの”BV Plus”になると上記のHD02と同様ドプラを使用しての再循環測定になり、実血流量もドプラを使用する為信頼度はグンと上昇すると思います。
クリットラインモニター
クリットラインモニターは、日機装の”BV計”同様、近赤外光を使用して再循環を測定します。
しかしながら、現在は販売が終了しており探すのは難しいかもしれません。
とても良い機器だっただけにとても残念です。
まとめ
ざっくりになってしまいましたが、本日は”再循環”について書かせていただきました。
再循環率の測定は測定手技も簡便な為、日常業務にも取り入れやすいです。
ルーチン業務へ取り入れることが出来れば、とても有用なアセスメントツールになります。
臨床工学技士として、日常的に測定が可能な有用なツールですので是非使いこなしていただければと思います。
また、何より患者さん毎の血管の癖をしっかりと把握することも大切です。
日々しっかりと観察し、微々たる変化に気づけるようにしたいものです。
少しでも、読んでくださる方のご施設で生かしていただけたら幸いです。
本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。
CE ガッチ
最後に、
シャントエコーの本ではありますが過去に自分が読んで大変勉強になった本のアマゾンリンクを貼っておきます。
エコーだけでなく、シャント管理に関してもとても勉強になります。
ご興味がある方は覗いてみていただけると幸いです。
参考文献
2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作成および修復に関するガイドライン(日本透析医学会 2011年)
参考サイト
HOSPY 臨床工学部