”血液透析” エコーを使用したVA管理 Flow Volume編
こんにちは、CE ガッチです。
いつも当ブログを読んでいただきありがとうございます。
季節の変わり目になりつつある現在ですが、季節が変わるということは生活がまた変化するという事になりますね。患者の体重の増加の仕方が変わりますし、増加の中の食事摂取量・水分摂取量が変わります。
ということは、治療に対する変化もまた然り。
表面を見ると変わりはありませんが、中身というか成分というか。その辺に着目してみると、また違った透析が見えてくるかもしれませんね。
JSDTの準備しながら、そんなことを考えてました。
資料の提出もまもなく開始されますので、早く形にしないといけないかな。
今回は、前回のエコーを活用したVA管理の続きを書きたいなということで”Flow Volume(FV)”についていきます。
最近のハンディエコーではなかなか測定することができないかもしれませんが、とても有用な指標になりますので興味を持っていただけると嬉しいです。
Flow Volume(FV)とは
Flow Volume とは、読んで字の如く、”流れの量”つまり”どのくらいの血液が流れているのか”を表すものになります。
単位は”ml/min”。
1分間あたりどのくらいの量の血液が流れているのかを表しています。
また、速度の単位でもありますのでどのくらいの流速をもってシャント血流が流れているのかもわかります。
これらは数値としてあらわされるので、感覚的な評価ではなく定量的な評価が可能になります。
つまり、数値での管理によって上がった下がったがわかるので、判断がしやすくボーダーを定めることも可能になるというわけですね。
測定位置
AVF
AVFを使用している患者に関しては、基本的にシャント肢上腕動脈を用いての測定になります。
上腕動脈を用いる理由は、
- 血管径が太く測定が容易であり誤差が少ないこと
- 末梢に比し、石灰化が少なく評価がしやすいこと
- VA全体の血流を反映すること
引用:
が挙げられます。
しかしながら、測定に関してはどうしても技術が必要であり測定者間での誤差も生じてしまいます。
入射角であったり測定部位をある程度統一していくことで、その影響を最小限にし正確な評価を行ってもらえればと思います。
AVG
AVGを使用している患者に関しては、
- 人工血管を用いて測定する方法
- 上腕動脈を用いる方法
の2通りがあります。
一般的には①の人工血管を使用した測定であると考えますが、留置の仕方であったり部位によってはどうしても測定が困難な場合があります。
その際は、上腕動脈での測定を行ってよいと思います。
しかしながら、本日詳しく触れることはしないですがAVGの場合、狭窄が発生しても流速の変化が生じにくいためにRIは変化しづらいとの話も聞きます。
RI自体は測定ができ、上昇もしますが静脈圧等の別な部分も大いに参考にし評価をしていただければと思います。
測定方法
FVは超音波診断装置のパルスドプラ法を使用して波形の観測を行い、測定を行います。
このような波形です、
パルドプラ法とは
パルスドプラ法とは、
プローブから送信された音の周波数が受信時にどの程度変化をしているかによって血流速度を求める方法
引用:春口洋昭.2018."看護師。臨床工学技士のための透析シャントエコー入門.MCメディカ出版.100
です。
周波数受信時の変化というものは、簡単に表現をすると救急車が近づいてくる際に音が高くなり、離れていく際に音が低く聞こえてくる変化。
つまり”ドプラ効果”を測定しています。
具体的には、
- Bモードを使用して、測定対象の血管を探し(FVであればシャント肢上腕動脈)、長軸にて描写する
- パルスドプラモードにして、サンプルボリュームを調整し対象の血管へ合わせる
- FFT画像(血流波形)をサンプリングし1拍分をトレース(自動で行ってくれる機種が多いです)
- 測定対象の血管径を測定
- FVが表示される
という流れが一般的かなと思います。
波形をトレースした際、縦軸は”血流速度”、横軸は”時間”になります。
実際のFV測定時の計算式は以下になります
注意点として、FV測定の際パルスドプラにて測定される血流には
・時間平均最高血流速度(TAMV)
・時間平均血流速度(TAV)
の2種類がありますが、時間平均最高血流速度を使用して計算をしてしまうと過大評価となってしまうので、必ず時間平均血流速度を使用して計算を行うように設定をしてください。
管理上の実際の数値
では、実際に管理をする際はどのような値を目安にすればよいかを確認します。
AVF
まず正常とされている範囲は、
とされています。
機能低下に関しては、
500ml/min未満またはベースの血流量より20%以上の減少は狭窄病変が発言している可能性がある
引用:日本透析医学会.2011年版「慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」.透析会誌,44(9):855~937,2011
との記載があり、日本臨床工学技士会による業務指針においても、
AVF の場合、上腕動脈血流量500mL/min と RI0.6が機能低下スクリーニングのカットオフ値と考えられるが、治療適応等については臨床症状などから症例ごとの評価が必要である。
引用:日本臨床工学技士会.「臨床医工学技士のためのバスキュラーアクセス日常管理指針」初版,49-56,2015
となっています。また、
特にFV350 ml/min以下になるとQBは200ml/minを確保することが困難となる。
引用:日本IVR学会.「血液透析用バスキュラーアクセスのインターベンションによる修復(VAIVT:Vascular Access Intervention Therapy)の基本的技術に関するガイドライン 」.第1版.2016
つまりAVFに関して機能低下を管理する場合、
をしていくことになり、下限は350ml/minとすることになります。
実際に管理をしていると、FV 350ml/minの方でもQB200ml/minの脱血が可能なことはあります。
ですので、FVを測定しながら臨床での状態(穿刺困難や脱血不良、吻合部末梢のしびれ等)を確認し管理をしていくことになります。
また、過剰血流の評価としては
血流量が1000-1500mL/min 以上、または血流量/心拍出量が20%以上で心不全が生じることがある。
引用:日本臨床工学技士会.「臨床医工学技士のためのバスキュラーアクセス日常管理指針」初版,49-56,2015
とされており、静脈高血圧やスチール症候群等の症状や、心不全を呈する原因となります。
AVG
AVGでは、
650ml/min未満またはベースの血流量より 20%以上の減少は狭窄病変が発現している可能性がある.
引用:日本透析医学会.2011年版「慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」.透析会誌,44(9):855~937,2011
が管理の目標となります。
しかしながら、経験上AVGはFVだけの管理では難しい部分があります。
理由は、AVGの場合脱血不良を呈することがAVFに比べ極端に少なく指標としての有用性が低いと感じるからです。
また、人工血管は性質上再循環が発生しやすいので流量自体が下がっている場合でも、再循環によって見かけの脱血量が確保されていることも多々あります。
ですので、FVだけにとらわれず静脈圧のモニタリングや再循環率の測定と合わせて管理していくのがよいと考えます。
2020年診療報酬改定において
実は今年の診療報酬改定においても、FVが算定の基準になっているものがあります。
K616-4 経皮的シャント拡張術・血栓除去術
1 初回
12,000点
2 1の実施後3月以内に実施する場合
12,000点
注
注 手術に伴う画像診断及び検査の費用は算定しない。通知
(1) 「1」については、3月に1回に限り算定する。(2) 「1」を算定してから3月以内に実施した場合には、次のいずれかに該当するものに限 り、1回を限度として「2」を算定する。また、次のいずれかの要件を満たす画像所見等 の医学的根拠を診療報酬明細書の概要欄に記載すること。
ア 透析シャント閉塞の場合
イ 超音波検査において、シャント血流量が400ml以下又は血管抵抗指数(RI)が0.6以上 の場合(アの場合を除く。)
(3) 「2」については、「1」の前回算定日(他の保険医療機関での算定を含む。)を診療 報酬明細書の摘要欄に記載すること。
この改定により、FV測定に関してしっかりとした意味がもたらされています。
400ml/minというのはとても意味深ですね。
まとめ
今回はFlow Volumeについて書かせていただきました。
FVは最近測定をしている施設も増加しているのではないかと感じます。また、FVを使用した管理を行うことで理学所見では気づくことが難しかったことに気が付けるようにあります。
また、患者のQBを適正に設定しているかどうかも判断ができ、至適透析へむけた管理も可能になるのではないかと考えています。
シャント管理は、日常的に行うからこそ意味が出てきます。
この記事が皆様の一歩につながればと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
参考サイト