CEガッチと愉快な仲間たち

CE ガッチと愉快な仲間たち

某病院で臨床工学技士として働くガッチの疑問と私見

”血液透析” 再循環て何? 

こんにちは、CE ガッチです。

 

いつも当ブログを読んでいただきありがとうございます。

 

気づいたら前回から半月も時間が経っていました。

6月になり緊急事態宣言も解除され、少しずつ街に活気が出てきました。

しかしながら、私たちが備えるべきは第二波であり行楽ではないのが残念です。

早く仲間と外に出かけたいですね。

 

さて、本日はバスキュラーアクセス日常管理の中から「再循環」について少し触れていきたいなと思います。

再循環の測定には、特定の測定機器であったり透析装置が必要になってきますが利用できればとても有用です。

シャントの狭窄部位により得手・不得手はありますが、それらの特性も理解しながら今後のモニタリングに生かしてもらえればと考えます。

正直に、測定可能な環境であれば利用しない手はないです。

それではよろしくお願いします。

 

 

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イラスト引用:pixabay

 

 

 再循環とは

透析治療における「再循環」とは、

フィルターにて浄化された血液が何らかの原因により脱血側へ混入、再度フィルターにて浄化される現象

です。

文章ではとても表現が難しいので図も入れて例えを書かせていただきます。

 

狭窄等の異常がない血管は下記のイラストのようになります。 

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狭窄等のないシャント血管の図

このように”100”の脱血があり、”100”の送血があります。

しかしながら、返血側よりも中枢側に狭窄が存在もしくは発生するとこのようになります。(少々強引な解釈です)

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中枢側狭窄の図

 

返血側よりも中枢側の狭窄により、合計”100”の送血はありますが”10”跳ね返されてしまいます。

この跳ね返されてしまう分が再度脱血側に乗り、改めて体外循環してしまう。

これが”再循環”です。

 

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再循環の図

再循環はパーセンテージで表され、"脱血した血液"に”送血した血液”の何%が混入しているかを表しています。

上記のイラストでは、”再循環率10%”ということになりますね。

 

判断基準として、ガイドラインには下記のように記載があります。

 

2回以上の再循環率の測定で、尿素希釈法を用いた場合は15%以上、尿素法以外の希釈法を用いた場合は5%以上であればその原因を検索する必要がある。

 

引用:2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作成および修復に関するガイドライン(日本透析医学会 2011年)

 

再循環の発生は、透析効率に直結します。

上記のイラストでも浄化すべき血液の脱血は”100”のところ"90"しか脱血されていません。1分間で”10”のロスがあれば1時間で”600”のロスになり、標準的な4時間では”2400”のロスが発生することになってしまいます。

つまりその分浄化量が減少してしまうので、全身の循環を考えれば透析効率は下がります。

(採血結果での効率は逆に上昇することが多いです、これは再循環している血液を採血している為にBUNが過剰に低値となり前値との差異が大きくなってしまうためです)

 

発生原因 と対応

発生原因となるのは、主に

  •  血管の狭窄
  • 穿刺位置の選択間違い
  • 脱血・送血の逆接続

 です。

 血管狭窄

何らかの原因にて送血血管の中枢側に狭窄が生じた場合、再循環が生じやすくなります。

はじめのイラストのような状態がですね。

しかしながら、狭窄部位が穿刺部間に生じている場合、送血に対する抵抗はないので基本的に再循環は発生しません。

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穿刺部間の狭窄

この時、透析中は問題がないのですが走行によりRIが上昇したり、静脈側の穿刺困難があったりします。

また、脱血側の末梢側、つまり吻合部寄りに狭窄が生じている場合も同様基本的には再循環は生じません。

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吻合部付近の狭窄

ご存じの通り、この時は素直に脱血が悪くなりますよね。

つまり狭窄の仕方によって再循環率も変わってきますので、狭窄があるというだけで再循環が発生するのではなく、部位まできちんとアセスメントを行い再循環の測定をしてみてください。

狭窄での再循環は、一本血管やAVGの患者さんが発生しやすいです。

鎖骨下での狭窄を繰り返すような患者さんでも、上行大静脈への合流するおおもとの血管が狭窄してしまうので再循環を生じやすい代表選手みたいになってしまいます。

プチ知識ですが、鎖骨下の狭窄を繰り返す方に関してはシャント肢の腫脹も見られますので観察を怠らないようにしたいですね。

また、一度狭窄をした部位は再狭窄を呈しやすいです。

つまり、狭窄にて再循環を起こす患者さんに関しては、治療後でも再狭窄にて再循環が発生するリスクが高い為サーベイランスとして再循環率測定を組み込むと良いと考えます。

 狭窄の場合は、基本的にVAIVTによる治療となります。

きちんとアセスメントをしたうえで、関連病院又は自施設にてVAIVTを行ってください。

穿刺位置の選択間違い

AVFの場合、A側の穿刺位置を間違えることはそうそうないように思います。

しかし、返血部位の位置を取り間違えると再循環は発生します。

 

  • 返血血管がどん詰まりになっていた。(閉塞していた)
  • 深部への交通枝があり、その先が狭窄していた。

 

等々基本的に先のどん詰まりが原因にはなってきますが、穿刺位置が近い場合の外筒の距離等も原因となります。

他にも、静脈側の穿刺トラブル時に血管の攣縮を認める場合があります。

この際も疑似的な狭窄状態となりますので注意してください。

 

穿刺針の距離に関しては、

 動脈側の穿刺針から5㎝以上離れた部位に静脈側の穿刺針の針先が来るように穿刺すれば、体外循環した血液の再循環を防ぐことが出来る。

 

引用:2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作成および修復に関するガイドライン(日本透析医学会 2011年)第4章(1)GL-2 解説

という記載もありますので、こちらを念頭に置きながら穿刺をしていただければと思います。

 

AVGの場合は、血流の読み間違いによる穿刺間違い時に起こります。

A側吻合部方面に送血をした場合、吻合部から流入する血流に乗り脱血側に流れてしまいます。

特にループ型の場合は、どちらが動脈との吻合部であるかをしっかりと確認してから穿刺してください。

 

逆接続

これは完全にミスから生じてしまうものですが、稀に見かけます。

上記のAVGの件もこれに含まれますね。

穿刺部はしっかりと確認したうえで接続してください。

 


 

これらの把握をするために、測定が可能であれば積極的に行っていくという事が大切になってきます。

次は、簡単にですが測定機器の紹介をしたいと思います。

 測定機器

測定機器には、

①HD02(後継のHD-03もあり)

②DCS-100NX・DCS-200Si・DBB-100NX

③クリットラインモニター

があります。

 

HD02

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HD02  引用:Transonic Japan

ドプラを使用して血球等の動きをみます。

測定方式は希釈法を使用し、再循環を測定します。

測定の際は生食の注入をする手技が必要で、生食の入れ方により上手な測定が出来なかったりという事もあります。

この装置は再循環率の測定の他、実血流量もドプラを使用し測定することが出来ます。

 

DCS-100NX

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DCS-100NX 引用:日機装株式会社

日機装株式会社のDCS-100NXです。

この装置のBV計を使用し、再循環を測定することが出来ます。

日機装社のBV計が搭載されている装置であれば測定可能となっていますので、同社のDCS-200SiやDBB-100NXも可能です。

こちらの標準のBV計は”近赤外光”を用いて”濃縮法”で測定を行います。

実血流量に関して測定は可能ですが、血液ポンプ部の回路径からの算出になり個人的には参考値です。

オプション扱いの”BV Plus”になると上記のHD02と同様ドプラを使用しての再循環測定になり、実血流量もドプラを使用する為信頼度はグンと上昇すると思います。

 クリットラインモニター

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クリットラインモニター

クリットラインモニターは、日機装の”BV計”同様、近赤外光を使用して再循環を測定します。

しかしながら、現在は販売が終了しており探すのは難しいかもしれません。

とても良い機器だっただけにとても残念です。

 

まとめ

ざっくりになってしまいましたが、本日は”再循環”について書かせていただきました。

再循環率の測定は測定手技も簡便な為、日常業務にも取り入れやすいです。

ルーチン業務へ取り入れることが出来れば、とても有用なアセスメントツールになります。

臨床工学技士として、日常的に測定が可能な有用なツールですので是非使いこなしていただければと思います。

また、何より患者さん毎の血管の癖をしっかりと把握することも大切です。

日々しっかりと観察し、微々たる変化に気づけるようにしたいものです。

 

少しでも、読んでくださる方のご施設で生かしていただけたら幸いです。

本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

 

CE ガッチ

 

最後に、

シャントエコーの本ではありますが過去に自分が読んで大変勉強になった本のアマゾンリンクを貼っておきます。

エコーだけでなく、シャント管理に関してもとても勉強になります。

ご興味がある方は覗いてみていただけると幸いです。

 

 

参考文献

2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作成および修復に関するガイドライン(日本透析医学会 2011年)

参考サイト

HOSPY 臨床工学部

hospy.jpn.org

 

”血液透析” こむら返り・筋痙攣て何?

こんにちは、CE ガッチです。

 

いつも当ブログを読んでいただきありがとうございます。

 

最近は、緊急事態宣言の緩和の影響なのか少しずつ外出されている方が増えている印象があります。

1週間後の感染者数の増大がないことを祈ります。

透析室での感染管理に関しても、日々変化しています。

中規模・大規模病院になれば感染制御室等があり、その部署を中心とした管理をされますが、小規模のクリニックになると専属が難しくスタッフ皆さんで検討するようになるかと思います。

様々なものを参考にしながら。日々の対応のアップデートをしっかりしていきたいです。

 

そんな中ではありますが、本日は透析中頻回に遭遇するであろう「こむら返り」・「筋痙攣」に関して書きたいと思います。

先日も治療中にこむら返りを起こした患者さんがいらっしゃいました。

対応を行っていたスタッフが足を伸展させてくれていたのですが、方向が逆であった為に逆効果をもたらしていました。

「こむら返り」・「筋痙攣」とは何なのかから、ちょっとした対処法までをご紹介できればと思います。

 

本日もよろしくお願い致します。

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イラスト引用:看護roo!

 透析室で勤務するようになり、施設によってはほぼ毎日といっていいほどの頻度で遭遇する合併症です。

対応する頻度が高いという事は、それほどちゃんとした対応を求められるという事になります。

また、頻度が高い場合慣例となっている対処法もあるかと思います。

 本日は、おさらいという意味合いも込めてやっていきます。

 

 

こむら返り・筋痙攣とは

こむら返りとは、

「腓(こむら)=ふくらはぎ」に起こる筋痙攣の総称で、「(足が)攣(つ)る」とも言われる。特に腓腹筋(ふくらはぎ)に起こりやすいため、腓腹筋攣縮と同義とみなすこともある。

引用:こむら返り-Wikipedia

です。

 

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引用:OurAge

筋痙攣とは、

突然起きて短時間持続する、疼痛を伴う筋または筋群の不随意収縮である。

引用:筋痙攣 - 07. 神経疾患 - MSDマニュアル プロフェッショナル版

透析中に、よく「足がつった!」と言っているあれです。

「こむら返り」は緋腹部に起こるものであり、筋痙攣の一部になります。

透析後半にかけて発生頻度が上昇します、しかしながら患者さんによっては透析終了後であったり夜間就寝中に起こることがあります。

多くの場合は自然軽快しますが、稀に筋肉痛を残すこともあるそうです。

透析治療では、切っても切れない因果がありながら詳細なメカニズムに関しては究明されておりません。

ですので、私見も交えながら考察したいと思います。

 

原因

それでは治療中に起こる「こむら返り」・「筋痙攣」の原因は何なのでしょうか?

主たる原因は主に2つ考えられます。

それらを一つずつ考察していきたいと思います。

 

循環血液量の減少(血圧低下や除水速度過多、DWがキツイなど)

治療開始時は浸透圧も高く余剰水分も多いため補えていたものが、後半にかけて低下。

後半になるにしたがい血漿再充填(プラズマ・リフィリング)が除水速度に追いつくことが出来なくなり、末梢における循環が悪化します。

これらの要素が重なり最終的には血圧が低下、結果的に筋肉の収縮運動に血流が追い付かず、こむら返りを起こします。

これが一番見かけることの多い例だと思います。

このタイプの方は、週の前半・2日空きの時に除水が多いためにおきてることが多いように思います。

また、DWがきつめに設定されている場合も過除水となり循環血液量の低下を招きます。

しかしながら、除水過多の患者さんに関してはたいてい週の後半は大丈夫なことが多いのですが、DWがきつめの方はDWに近づく度にこむら返りを引き起こしますので毎回に近い形となります。

このように、発生頻度により背景要因が異なることもあります。

もし繰り返す方がいましたら、頻度にも注目してみてください。

 

電解質の異常

 上記のように循環血液量由来のものが大半だとは感じますが、こちらも重要な要因となります。

筋肉の収縮には電解質が重要な働きをします。

 

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すごく大まかにですが、筋収縮は、

アセチルコリンが骨格筋上にある受容体に結合した際にNaチャネルが開く。

Naイオンが筋細胞内に流入し、脱分極が生じる。

活動電位が発生しT管系の深部まで伝藩、Caチャネルを介し筋小胞からCaイオンを放出

CaイオンがトロポニンC結合し、トロポミオシンが移動

アクチンとミオシンの相互作用が生じ収縮する

このような過程を経て行うのですが、上記にNaイオンCaイオンが出てきていますね。

つまり、筋収縮でNaとCaはとても大切な役割を担っていますので、これらが不足してしまうと筋収縮がうまく行えなくなり筋痙攣を引き起こすと考えます。

透析患者に関して、電解質の異常は切り離せません。

Caイオンも、重曹透析液でのクエン酸によるキレートやエテルカルセチドの投与等で低下しがちですので注意しいてみてみるとよいかもしれません。

 

他には

他にも、L-カルニチンの低下や血清Mgの低下等も原因になると言われています。

また、筋力の低下等も影響があるとの事が言われており日本理学療法学術大会でも運動療法と筋痙攣の学会発表があったりしますので、興味のある方はみてみてください。

 

jspt.japanpt.or.jp

 

予防と対応

 

予防策として

体重の増加を多くしすぎないことが挙げられます。

おおよそですが、体重増は3~5%が良いと言われています。

日本透析医学会のガイドラインでは、「中2日の体重増加は6%未満にすることが望ましい」と記載されています。

患者さんに体重の事を言うのは心苦しいですが、心を鬼にしてください。結果的には患者さんの為になります。

また、医師と相談をしてDWの状態がどうであるかを再評価してみるのも良いかもしれません。

 

治療中の対応として

発生した際は循環血液量の保持を行いながら筋痙攣に対し対応します。

一般的には、除水の停止や補液・10%Naやカルチコールの静注だと思います。

同時に、湯丹保や筋肉を収縮と逆に引っ張ったりして症状を和らげます。

また「芍薬甘草湯」の内服も効果がある症例もあるとの報告があり、予防的に内服されている患者さんも多い印象です。

経験上、有効な患者さんも多いと思います。ですので何か薬はないのかと言われた際には勧める様にしています。

 

まとめ

雑多ですが、私見も含め「こむら返り」「筋痙攣」に関して書かせていいただきました。

対応がうまくいくと、自分の自信にもなります。また、患者さんからの信頼度もアップです。

たった一つの症状に関しても様々な要因が絡み複雑化していきますので、まずはどの原因が一番近いのかを患者背景やデータをみて考察してみてください。

考えることで患者さんへの理解度も増しますので、良いことだらけです。

 

最後にいつも自分が参考にしている医療雑誌のリンクを貼っておきますので参考になればと思います。

 

本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

 

CE ガッチ

 

参考文献

・ 臨床透析 34巻7号 「透析医療と合併症」キュア&ケアガイドブック

ー栗原玲 CQ35 透析中の”下肢筋につり(筋硬直)”への対応・対策はどのようにおこないますか? 

・室賀一宏、松井則明 「透析患者の下肢の筋痙攣に対する芍薬甘草湯の使用経験」 日本東洋医学雑誌 46巻 3号

筋けいれん・こむらがえり | MediPress透析

骨格筋収縮のメカニズム(2)|骨格筋の機能 | 看護roo![カンゴルー]

 

”血液透析” 圧力の考え方 動脈圧編

こんにちは、CE ガッチです。

 

いつも当ブログを読んでいただきありがとうございます。

 

透析医会から4/30付で「透析施設における標準的な透析操作と感染予防に関するガイドライン(5訂版)」が発表になっていますが、皆様目を通されましたでしょうか?

第5章のⅩ、「新興感染症として、COVID-19の対応もガイドラインに記載されました。

すでに読んでくださる皆様のご施設では、周知・徹底されているベーシックな部分ではありますが、このようにガイドラインとして記載されることでその管理の重要性を再確認しました。

また、透析医会では、他にも「新型コロナウイルス感染症に対する透析施設での対応について(第4報改訂版)」であったりと関連する様々な情報が公開されていますので、対応やプロトコル作成に困った際には見てみるととても参考になるかなと思います。

以下に透析医会のHPのリンクを貼っておきます。

 

www.touseki-ikai.or.jp

 

ご参考になれば幸いです。

他にも、国立感染症研究所にて濃厚接触に関する定義が4/20に更新されていたりします。

濃厚接触と判断する目安を「2メートル以内の接触」から「1メートル以内かつ15分以上の接触」への変更。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染者と接触した日の始まりを「発病した日」から「発病した日から2日前」に。

 

引用:積極的疫学調査実施要領における濃厚接触者の定義変更等に関するQ&A(2020年4月22日)

国立感染症研究所にも様々な情報が更新されています。

チェックすると良いかもしれませんね。

 

www.niid.go.jp

 

さて、前回はBSMにて目にする機会も多い「静脈圧」の関する私見と考え方について書かせていただきました。まだ読んでない方は下記から宜しくお願いします。 

 

ce-gacchi.hatenablog.com

 

前置きが長くなってしまいましたが、本日は前回の圧力の考え方の第二弾になります「動脈圧」に関して個人的な考え方と警報等の対応を書かせていただきます。

本日も宜しくお願いします。

 

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留意事項

本項は、動的動脈圧に関して記載を致します。また、因子に関しては大きく影響のあるものに限定し考えています。

実際は、血液粘性や回路抵抗・ファウリング等の影響も考えられますが今回は省いていますので、ご了承の程宜しくお願い致します。

 

動脈圧とは

動脈圧とは、

血液浄化療法における動脈側回路にて測定される圧力

です。

測定位置

一般的には、動脈側ドリップチャンバー(以下Aチャンバー)にある圧力モニタラインにて測定されます。

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動脈圧の測定位置

 ここで測定されている圧力が測定され、透析装置のモニタに表示されています。

 

どのような圧力をモニタリングしているか

それでは、実際Aチャンバーにはどのような圧力がかかっているのかを分けて考えていきたいと思います。

 

①Aチャンバーへの流入

 影響するもの:脱血状況・ポンプ速度・A側接続部からAチャンバーまでの回路状況

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流入

流入する圧力、つまり脱血に関する圧力になります。

脱血状態が良好であれば、ポンプチューブにはポンプのしごきと速度により相応の血液が充填されますので押し出す際に圧力が掛かってくることになります。(ポンプにおける血液充填速度に関して、厳密にはポンプスピード・ポンプセグメントや回路の弾性等が関係してきます)

しかしながら、脱血状態が不良であれば血液充填も不十分になり押し出した際にかかる圧力は低下します。

つまり押すものがなければ圧力は掛からないという事になります。

他にも、回路の折れ曲がりがあったりすると疑似的な脱血不良を引き起こし圧力は低下します。

 

そして、少し偏った考えになるかもしれませんが流入圧は個々の設定により規定された値をとると考えます。

これは、脱血具合やポンプ速度、血液粘性・回路コンプライアンス等により規定されるものであり、それ以上上昇することは基本的にはないです。

しかしながら、ではその値はいくつだと言われると「患者さんにより」となってしまします。

これは、患者さんによりHbであったりHctなどの値が違うのでポンプが同じ力で押したとしても若干の違いが出てきてしまうからです。

流入圧の変化に関しては基本低下しかしません。

低下した際はAチャンバーよりも上流側を確認すればよいのです。

 

②Aチャンバーからの流出圧

 影響因子:①の因子・フィルターへの流入圧・フィルター出口部の状態・透析液圧・Vチャンバーでの血液状態・Vチャンバー以降の回路状態・送血状況等

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流出圧

影響因子をずらっと記載しましたが、気が付きましたでしょうか?

勿論ではあるのですが、①でお話した流入圧が一定と仮定した際、Aチャンバー以降の回路状況すべてが流出圧に関係してきます。

これは、動脈圧が透析回路の圧力測定中で一番上流側にあるからです。

ですので、どうしても静脈系の圧が上昇すれば同じように上がってきます。

ただ、静脈圧モニタではどうしても反応しきれない部分があります。

それが、Aチャンバー出口部の凝固であったり血液濃縮・フィルターヘッダでの凝固などです。

上記の事もあり、流入圧が一定であれば流出圧は基本的に上昇しかしません。

つまり、動脈圧が上昇した際はAチャンバー以降の回路状態を確認すればよいわけです。

 

圧力の変化を考察する

①・②の変化を考える

という事で前振りが長くなりましたが、Aチャンバーで測定している圧力は①・②の和です。

次はどの場所の変化が生じるとどのようなことになるのかを考察したいと思います。

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流入圧・流出圧
 ①流入圧の変化

流入圧は前述したとおり脱血に関する圧力になります。

脱血具合やポンプ速度、血液粘性・回路コンプライアンスや回路状態等により規定されるものであり、基本的には一定です。

流入圧は脱血状態が良好であれば基本的には取りうる可能性のある最高値となりますので、変化は低下のみとなります。

では低下する際に考えられる原因は何でしょうか?

主だったものとしては、

・脱血不良(穿刺等の手技関連)

・回路の折れ曲がり(キンク)

です。

この中でもそのほとんどが脱血不良です。そして脱血不良の原因になるのが穿刺と血管狭窄です。

穿刺に関しては、

・そもそも血管が確保できていない

・外筒留置位置が不適切

・血管狭窄 等々

その患者さんの血管で考えられる可能性を探り、もし血管に関して何らかのトラブルがある場合にはVAIVT等の処置を検討するのが良いかと思います。

 

②流出圧の変化

流出圧に関してはVチャンバーの時と同様に、下げる因子が基本的にはありません。

つまり圧力は上昇する事しかなく、その原因は流出側にしかありません。

そして、流出圧上昇原因の中でも重要なのが血液濃縮での粘度上昇によるものです。

HDや前希釈HDFではほとんど起こることはありませんが、後希釈HDF時に効果を発揮します。

後希釈HDFは治療の構造上、初めに補液分を除水します。

自身の経験で2.4L/h程度の補液ではありましたが、通常除水に補液等量分の除水が加算されるために血液粘度の上昇から中空糸内のずり応力の上昇・ヘッダ流入圧の上昇を呈し、動脈圧が上昇するという事象を何度も経験しました。

上記の場合は血液凝固も呈しやすく、TMP上昇へも繋がってくる為注意が必要です。

また、これを防ぐために濾過量は血液量の25%程度との話もあります。

 

他にも、フィルター以降での圧上昇も動脈圧上昇の原因となりえますが、その距離感や間での圧力モニタリングもある為、動脈圧警報発報の前に静脈圧や透析液圧での警報が鳴動することの方が多いと思います。

 

まとめ

本日は、動脈圧の考え方について書かせていただきました。

動脈圧は施設によりモニタリングをしている・していないの違いがあり、していたとしてもただつけているだけというのも聞いたことがあります。

しかしながら、後希釈HDFを施行するためには前述のように必須のモニタリング事項でもあります。

本記事を読んでいただき、動脈圧モニタリングに関して改めて考えてもらうことができれば幸いです。

 

今後は、時事ネタをまぜながら書いていきたいとも思っております。

本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

 

CE ガッチ