CEガッチと愉快な仲間たち

CE ガッチと愉快な仲間たち

某病院で臨床工学技士として働くガッチの疑問と私見

”血液透析” こむら返り・筋痙攣て何?

こんにちは、CE ガッチです。

 

いつも当ブログを読んでいただきありがとうございます。

 

最近は、緊急事態宣言の緩和の影響なのか少しずつ外出されている方が増えている印象があります。

1週間後の感染者数の増大がないことを祈ります。

透析室での感染管理に関しても、日々変化しています。

中規模・大規模病院になれば感染制御室等があり、その部署を中心とした管理をされますが、小規模のクリニックになると専属が難しくスタッフ皆さんで検討するようになるかと思います。

様々なものを参考にしながら。日々の対応のアップデートをしっかりしていきたいです。

 

そんな中ではありますが、本日は透析中頻回に遭遇するであろう「こむら返り」・「筋痙攣」に関して書きたいと思います。

先日も治療中にこむら返りを起こした患者さんがいらっしゃいました。

対応を行っていたスタッフが足を伸展させてくれていたのですが、方向が逆であった為に逆効果をもたらしていました。

「こむら返り」・「筋痙攣」とは何なのかから、ちょっとした対処法までをご紹介できればと思います。

 

本日もよろしくお願い致します。

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イラスト引用:看護roo!

 透析室で勤務するようになり、施設によってはほぼ毎日といっていいほどの頻度で遭遇する合併症です。

対応する頻度が高いという事は、それほどちゃんとした対応を求められるという事になります。

また、頻度が高い場合慣例となっている対処法もあるかと思います。

 本日は、おさらいという意味合いも込めてやっていきます。

 

 

こむら返り・筋痙攣とは

こむら返りとは、

「腓(こむら)=ふくらはぎ」に起こる筋痙攣の総称で、「(足が)攣(つ)る」とも言われる。特に腓腹筋(ふくらはぎ)に起こりやすいため、腓腹筋攣縮と同義とみなすこともある。

引用:こむら返り-Wikipedia

です。

 

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引用:OurAge

筋痙攣とは、

突然起きて短時間持続する、疼痛を伴う筋または筋群の不随意収縮である。

引用:筋痙攣 - 07. 神経疾患 - MSDマニュアル プロフェッショナル版

透析中に、よく「足がつった!」と言っているあれです。

「こむら返り」は緋腹部に起こるものであり、筋痙攣の一部になります。

透析後半にかけて発生頻度が上昇します、しかしながら患者さんによっては透析終了後であったり夜間就寝中に起こることがあります。

多くの場合は自然軽快しますが、稀に筋肉痛を残すこともあるそうです。

透析治療では、切っても切れない因果がありながら詳細なメカニズムに関しては究明されておりません。

ですので、私見も交えながら考察したいと思います。

 

原因

それでは治療中に起こる「こむら返り」・「筋痙攣」の原因は何なのでしょうか?

主たる原因は主に2つ考えられます。

それらを一つずつ考察していきたいと思います。

 

循環血液量の減少(血圧低下や除水速度過多、DWがキツイなど)

治療開始時は浸透圧も高く余剰水分も多いため補えていたものが、後半にかけて低下。

後半になるにしたがい血漿再充填(プラズマ・リフィリング)が除水速度に追いつくことが出来なくなり、末梢における循環が悪化します。

これらの要素が重なり最終的には血圧が低下、結果的に筋肉の収縮運動に血流が追い付かず、こむら返りを起こします。

これが一番見かけることの多い例だと思います。

このタイプの方は、週の前半・2日空きの時に除水が多いためにおきてることが多いように思います。

また、DWがきつめに設定されている場合も過除水となり循環血液量の低下を招きます。

しかしながら、除水過多の患者さんに関してはたいてい週の後半は大丈夫なことが多いのですが、DWがきつめの方はDWに近づく度にこむら返りを引き起こしますので毎回に近い形となります。

このように、発生頻度により背景要因が異なることもあります。

もし繰り返す方がいましたら、頻度にも注目してみてください。

 

電解質の異常

 上記のように循環血液量由来のものが大半だとは感じますが、こちらも重要な要因となります。

筋肉の収縮には電解質が重要な働きをします。

 

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すごく大まかにですが、筋収縮は、

アセチルコリンが骨格筋上にある受容体に結合した際にNaチャネルが開く。

Naイオンが筋細胞内に流入し、脱分極が生じる。

活動電位が発生しT管系の深部まで伝藩、Caチャネルを介し筋小胞からCaイオンを放出

CaイオンがトロポニンC結合し、トロポミオシンが移動

アクチンとミオシンの相互作用が生じ収縮する

このような過程を経て行うのですが、上記にNaイオンCaイオンが出てきていますね。

つまり、筋収縮でNaとCaはとても大切な役割を担っていますので、これらが不足してしまうと筋収縮がうまく行えなくなり筋痙攣を引き起こすと考えます。

透析患者に関して、電解質の異常は切り離せません。

Caイオンも、重曹透析液でのクエン酸によるキレートやエテルカルセチドの投与等で低下しがちですので注意しいてみてみるとよいかもしれません。

 

他には

他にも、L-カルニチンの低下や血清Mgの低下等も原因になると言われています。

また、筋力の低下等も影響があるとの事が言われており日本理学療法学術大会でも運動療法と筋痙攣の学会発表があったりしますので、興味のある方はみてみてください。

 

jspt.japanpt.or.jp

 

予防と対応

 

予防策として

体重の増加を多くしすぎないことが挙げられます。

おおよそですが、体重増は3~5%が良いと言われています。

日本透析医学会のガイドラインでは、「中2日の体重増加は6%未満にすることが望ましい」と記載されています。

患者さんに体重の事を言うのは心苦しいですが、心を鬼にしてください。結果的には患者さんの為になります。

また、医師と相談をしてDWの状態がどうであるかを再評価してみるのも良いかもしれません。

 

治療中の対応として

発生した際は循環血液量の保持を行いながら筋痙攣に対し対応します。

一般的には、除水の停止や補液・10%Naやカルチコールの静注だと思います。

同時に、湯丹保や筋肉を収縮と逆に引っ張ったりして症状を和らげます。

また「芍薬甘草湯」の内服も効果がある症例もあるとの報告があり、予防的に内服されている患者さんも多い印象です。

経験上、有効な患者さんも多いと思います。ですので何か薬はないのかと言われた際には勧める様にしています。

 

まとめ

雑多ですが、私見も含め「こむら返り」「筋痙攣」に関して書かせていいただきました。

対応がうまくいくと、自分の自信にもなります。また、患者さんからの信頼度もアップです。

たった一つの症状に関しても様々な要因が絡み複雑化していきますので、まずはどの原因が一番近いのかを患者背景やデータをみて考察してみてください。

考えることで患者さんへの理解度も増しますので、良いことだらけです。

 

最後にいつも自分が参考にしている医療雑誌のリンクを貼っておきますので参考になればと思います。

 

本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

 

CE ガッチ

 

参考文献

・ 臨床透析 34巻7号 「透析医療と合併症」キュア&ケアガイドブック

ー栗原玲 CQ35 透析中の”下肢筋につり(筋硬直)”への対応・対策はどのようにおこないますか? 

・室賀一宏、松井則明 「透析患者の下肢の筋痙攣に対する芍薬甘草湯の使用経験」 日本東洋医学雑誌 46巻 3号

筋けいれん・こむらがえり | MediPress透析

骨格筋収縮のメカニズム(2)|骨格筋の機能 | 看護roo![カンゴルー]

 

”血液透析” 圧力の考え方 動脈圧編

こんにちは、CE ガッチです。

 

いつも当ブログを読んでいただきありがとうございます。

 

透析医会から4/30付で「透析施設における標準的な透析操作と感染予防に関するガイドライン(5訂版)」が発表になっていますが、皆様目を通されましたでしょうか?

第5章のⅩ、「新興感染症として、COVID-19の対応もガイドラインに記載されました。

すでに読んでくださる皆様のご施設では、周知・徹底されているベーシックな部分ではありますが、このようにガイドラインとして記載されることでその管理の重要性を再確認しました。

また、透析医会では、他にも「新型コロナウイルス感染症に対する透析施設での対応について(第4報改訂版)」であったりと関連する様々な情報が公開されていますので、対応やプロトコル作成に困った際には見てみるととても参考になるかなと思います。

以下に透析医会のHPのリンクを貼っておきます。

 

www.touseki-ikai.or.jp

 

ご参考になれば幸いです。

他にも、国立感染症研究所にて濃厚接触に関する定義が4/20に更新されていたりします。

濃厚接触と判断する目安を「2メートル以内の接触」から「1メートル以内かつ15分以上の接触」への変更。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染者と接触した日の始まりを「発病した日」から「発病した日から2日前」に。

 

引用:積極的疫学調査実施要領における濃厚接触者の定義変更等に関するQ&A(2020年4月22日)

国立感染症研究所にも様々な情報が更新されています。

チェックすると良いかもしれませんね。

 

www.niid.go.jp

 

さて、前回はBSMにて目にする機会も多い「静脈圧」の関する私見と考え方について書かせていただきました。まだ読んでない方は下記から宜しくお願いします。 

 

ce-gacchi.hatenablog.com

 

前置きが長くなってしまいましたが、本日は前回の圧力の考え方の第二弾になります「動脈圧」に関して個人的な考え方と警報等の対応を書かせていただきます。

本日も宜しくお願いします。

 

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留意事項

本項は、動的動脈圧に関して記載を致します。また、因子に関しては大きく影響のあるものに限定し考えています。

実際は、血液粘性や回路抵抗・ファウリング等の影響も考えられますが今回は省いていますので、ご了承の程宜しくお願い致します。

 

動脈圧とは

動脈圧とは、

血液浄化療法における動脈側回路にて測定される圧力

です。

測定位置

一般的には、動脈側ドリップチャンバー(以下Aチャンバー)にある圧力モニタラインにて測定されます。

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動脈圧の測定位置

 ここで測定されている圧力が測定され、透析装置のモニタに表示されています。

 

どのような圧力をモニタリングしているか

それでは、実際Aチャンバーにはどのような圧力がかかっているのかを分けて考えていきたいと思います。

 

①Aチャンバーへの流入

 影響するもの:脱血状況・ポンプ速度・A側接続部からAチャンバーまでの回路状況

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流入

流入する圧力、つまり脱血に関する圧力になります。

脱血状態が良好であれば、ポンプチューブにはポンプのしごきと速度により相応の血液が充填されますので押し出す際に圧力が掛かってくることになります。(ポンプにおける血液充填速度に関して、厳密にはポンプスピード・ポンプセグメントや回路の弾性等が関係してきます)

しかしながら、脱血状態が不良であれば血液充填も不十分になり押し出した際にかかる圧力は低下します。

つまり押すものがなければ圧力は掛からないという事になります。

他にも、回路の折れ曲がりがあったりすると疑似的な脱血不良を引き起こし圧力は低下します。

 

そして、少し偏った考えになるかもしれませんが流入圧は個々の設定により規定された値をとると考えます。

これは、脱血具合やポンプ速度、血液粘性・回路コンプライアンス等により規定されるものであり、それ以上上昇することは基本的にはないです。

しかしながら、ではその値はいくつだと言われると「患者さんにより」となってしまします。

これは、患者さんによりHbであったりHctなどの値が違うのでポンプが同じ力で押したとしても若干の違いが出てきてしまうからです。

流入圧の変化に関しては基本低下しかしません。

低下した際はAチャンバーよりも上流側を確認すればよいのです。

 

②Aチャンバーからの流出圧

 影響因子:①の因子・フィルターへの流入圧・フィルター出口部の状態・透析液圧・Vチャンバーでの血液状態・Vチャンバー以降の回路状態・送血状況等

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流出圧

影響因子をずらっと記載しましたが、気が付きましたでしょうか?

勿論ではあるのですが、①でお話した流入圧が一定と仮定した際、Aチャンバー以降の回路状況すべてが流出圧に関係してきます。

これは、動脈圧が透析回路の圧力測定中で一番上流側にあるからです。

ですので、どうしても静脈系の圧が上昇すれば同じように上がってきます。

ただ、静脈圧モニタではどうしても反応しきれない部分があります。

それが、Aチャンバー出口部の凝固であったり血液濃縮・フィルターヘッダでの凝固などです。

上記の事もあり、流入圧が一定であれば流出圧は基本的に上昇しかしません。

つまり、動脈圧が上昇した際はAチャンバー以降の回路状態を確認すればよいわけです。

 

圧力の変化を考察する

①・②の変化を考える

という事で前振りが長くなりましたが、Aチャンバーで測定している圧力は①・②の和です。

次はどの場所の変化が生じるとどのようなことになるのかを考察したいと思います。

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流入圧・流出圧
 ①流入圧の変化

流入圧は前述したとおり脱血に関する圧力になります。

脱血具合やポンプ速度、血液粘性・回路コンプライアンスや回路状態等により規定されるものであり、基本的には一定です。

流入圧は脱血状態が良好であれば基本的には取りうる可能性のある最高値となりますので、変化は低下のみとなります。

では低下する際に考えられる原因は何でしょうか?

主だったものとしては、

・脱血不良(穿刺等の手技関連)

・回路の折れ曲がり(キンク)

です。

この中でもそのほとんどが脱血不良です。そして脱血不良の原因になるのが穿刺と血管狭窄です。

穿刺に関しては、

・そもそも血管が確保できていない

・外筒留置位置が不適切

・血管狭窄 等々

その患者さんの血管で考えられる可能性を探り、もし血管に関して何らかのトラブルがある場合にはVAIVT等の処置を検討するのが良いかと思います。

 

②流出圧の変化

流出圧に関してはVチャンバーの時と同様に、下げる因子が基本的にはありません。

つまり圧力は上昇する事しかなく、その原因は流出側にしかありません。

そして、流出圧上昇原因の中でも重要なのが血液濃縮での粘度上昇によるものです。

HDや前希釈HDFではほとんど起こることはありませんが、後希釈HDF時に効果を発揮します。

後希釈HDFは治療の構造上、初めに補液分を除水します。

自身の経験で2.4L/h程度の補液ではありましたが、通常除水に補液等量分の除水が加算されるために血液粘度の上昇から中空糸内のずり応力の上昇・ヘッダ流入圧の上昇を呈し、動脈圧が上昇するという事象を何度も経験しました。

上記の場合は血液凝固も呈しやすく、TMP上昇へも繋がってくる為注意が必要です。

また、これを防ぐために濾過量は血液量の25%程度との話もあります。

 

他にも、フィルター以降での圧上昇も動脈圧上昇の原因となりえますが、その距離感や間での圧力モニタリングもある為、動脈圧警報発報の前に静脈圧や透析液圧での警報が鳴動することの方が多いと思います。

 

まとめ

本日は、動脈圧の考え方について書かせていただきました。

動脈圧は施設によりモニタリングをしている・していないの違いがあり、していたとしてもただつけているだけというのも聞いたことがあります。

しかしながら、後希釈HDFを施行するためには前述のように必須のモニタリング事項でもあります。

本記事を読んでいただき、動脈圧モニタリングに関して改めて考えてもらうことができれば幸いです。

 

今後は、時事ネタをまぜながら書いていきたいとも思っております。

本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

 

CE ガッチ

”血液透析” 圧力の考え方 静脈圧編

こんにちは、CE ガッチです。

 

ここ数ヶ月「テレワーク」という言葉がたくさん聞こえてくるようになりました。

メーカーの方も病院への訪問規制により、待機業務が多くなり段々とテレワークへ移行しているという事も聞いております。

医療は対面にて患者の表情や症状を確認しながら行っていくと思っているのですが、在宅透析などはその場で対処することが難しいこともありテレビ電話(Skype等)などで対応することもあるという事です。

将来的に在宅での医療が進む(遠隔での医療が進む)時、自分たちはどのように働いていくのか。

時々考えてしまいますね。

 

さて、本日は透析中の圧力に関する考え方から関連する警報について考えていきたいと思います。

圧力に関して、「これだからこう!」を考えられるようになると患者さんへの「こうしてね」を理論的に説明しやすくなります。

他、OHDFでの考え方等にも使えますので是非考えてみてもらえればと思います。

では宜しくお願いします。

 

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イラスト引用:看護roo!

 

透析に関わる圧力

透析に関わる圧力には何があるでしょうか?

静脈圧

透析室で勤務をしていて一番目にするものは「静脈圧」ではないのかなと思います。

警報でも一番鳴動回数が多いのではないでしょうか?

圧力の動きも多く、穿刺部や体位などとの連動性も高いので血液透析に従事するのであればしっかりと理解をしたいです。

透析液圧

次に目にするのは「透析液圧」だと思います。

透析装置のメーカーにもよるとは思いますが、装置の画面ではだいたいが静脈圧の隣に表示されています。

このあたりから少し対応があやふやになってきます。

今となっては恥ずかしい話ですが私は2、3年目の頃、透析液圧の警報が鳴った際の対応に悩んだ時期がありました。

透析液圧ってダイアライザー関連だから触れないじゃんと。

もちろんそうですが、場合によっては違う事もあります。ややこしいですね。

動脈圧

そして「動脈圧」

メーカーによって「動脈圧」や「PBI」と若干名称が異なることもありますが、基本的には同じ位置で測定をしているはずです。

動脈圧は「TMP」(膜間圧力差)をより正確に測定するためであったり、後希釈の血液濃縮具合の簡易的な把握や脱血状態の把握に使用されていると思います。

勤務されている施設によっては、動脈圧をモニターしている施設としていない施設もあります。

勿論あるに越したことはないのですが、少し前の機種になるとメーカーによってはオプションであったりするという事もありました。

上記の理由から結果的にコスト的に省かれてしまっている場合もあります。

ですが、とても大切なモニター項目です。

TMP(膜間圧力差)

最後に、少し出てきていましたが「TMP」(膜間圧力差)です。

HDFではおなじみです。2012年の診療報酬改定以降HDFが大幅に普及してからよく聞くようになりました。

膜の経時劣化に関わる事象や低分子蛋白の除去に関わってくる圧力です。

 

すべてについて詳細を記載しますとすごいボリュームになりそうなので、本日は「静脈圧」について書いていきたいと思います。

静脈圧

透析装置で測定している静脈圧は、名称の通り

「静脈側回路で測定している圧力」

です。

測定位置

測定位置は、回路の静脈側エアートラップチャンバ(以下Vチャンバ)です。

少し詳しく書くと、Vチャンバの圧力モニターラインからトランスデューサ保護フィルタを介し、装置受圧口に接続をして測定しています。

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 どのような圧力を見ているか

Vチャンバにはどうのような圧力がかかっているかを一緒に考えてみましょう。

 

留意事項

本記事は大きく影響のある圧力に関して考えています。

実際は、血液粘性や回路抵抗・ファウリング等の影響も考えられますが今回は省いていますので、ご了承の程、宜しくお願い致します。

 

①フィルター出口からVチャンバへ流入する血液の圧力

影響するもの:脱血・ポンプ速度・Vチャンバーまでの回路状態

 

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つまり、脱血の状況に影響される圧力です。

この圧力は静脈圧の基本となる圧力です、この力がしっかりしていなければ圧力は掛からなくなります。

脱血が良好であれば流入する血液は保たれているので圧力はしっかりかかってきます、反対に脱血が悪い時は流入が悪くなり、圧力がかからなくなります。 

 

②Vチャンバからの流出圧

 影響するもの:①の因子・落差圧・チャンバー凝固・回路抵抗(折れ曲がり)等

 

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流出圧、つまりVチャンバーから流出する血液の力はチャンバーへのinの力と高さによる落差圧(力としては挙げていますが、基本的には透析中に変化があるものではないです)により規定されます。

そこに回路凝固などの抵抗が発生します。(Vチャンバー出口部までの範囲)

in側の力に変化がなければ、回路凝固により圧力は高くなる方向へ働きます。

 

③血管への流入抵抗

 影響するもの:①の因子・②の因子・患者体位・血管抵抗(狭窄や径)・カニューレ

        の状況(折れ曲がりや血栓、抜針等)等

 

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Vチャンバー出口から送血血管の状況を反映します。

血管への流入抵抗に関わるものは、基本的には穿刺・針先関連と体位がおおきな要因になってきます。

穿刺の際に細い血管へ穿刺した、穿刺の際に引っ掛かっている、血管確保が出来ていない、中枢側の狭窄等々です。

針先に関しては、凝血塊や抜針等が考えられます。

体位では腕を曲げていた、上腕をおさえていた等があります。

 

 圧力の変化を考察する

①・②・③の変化を考える

という事で前振りが長くなりましたが、Vチャンバーで測定している圧力は①・②・③の総和です。

次はどの場所の変化が生じるとどのようなことになるのかを考察したいと思います。

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流入圧の変化

 流入圧は静脈圧を規定する基本の圧力になります。

設定されたQBでの送血圧を基本としますので、ここが原因で大きくなること(静脈圧がかかりすぎる事)はないと考えてよいです。(厳密にいえばあるかもしれませんが)

つまり、この部分は圧力が小さくなることしかありません。

では、どのような状況で小さくなるのでしょうか?

前述の影響因子から考えてみますと、

1、脱血状態の不良

2、Vチャンバーまでの回路の折れ曲がりによる疑似的な脱血不良

3、Vチャンバーまでの回路凝固

です、何度も話に出しますがここの圧力が静脈圧のベースになります。

もし下限が頻発するような場合は、脱血状態や回路の折れ曲がりを疑ってみてください。

 

②流出圧の変化

流出圧に関しては、下げる因子がありません。(基本的には)

つまりここで異常がある場合は、圧力は上昇します。

原因としては、Vチャンバーメッシュ部での血液凝固です。

Vチャンバーでの血液凝固は、経時で大きくなるため急な上昇を伴わない場合が多い(凝血塊の飛んだ場合を除く)です。

これが原因での圧力上昇を認めた際は、クロットの状況を確認しながら回路交換などの対応を検討してください。

ここで詳しくは触れませんが、Vチャンバーでの凝固原因として抗凝固剤の選択や持続注入量不足・炎症反応による凝固亢進などが考えられます。

③送血抵抗の変化

送血抵抗も②同様、異常があった際は基本的に圧力が上昇します。

原因としては回路・血管・外筒留置位置・患者体位が考えられますので分割して考えたいと思います。

 

1、回路の異常

回路に関して、基本的には折れ曲がり(キンク)です。

気泡センサーや回路クランプ部でのキンク、時には患者さんの身体の下になっていたりもしますので確認してみてください。

 

2、血管の異常

血管の異常の場合は、基本的に穿刺部よりも中枢側に狭窄や閉塞が存在している場合に静脈圧が上昇します。

狭窄が生じている場合でも、圧の上昇が軽度の場合もあります。

この場合は、当該患者さんにおける同穿刺部位での普段の静脈圧を観察しながら、圧の上昇がないか・その患者さんの狭窄好発部位はどこなのという事の把握も大切です。

3、外筒留置位置の異常

 

頻回に目にする「針先調整するね」というものです。

血管の内膜剥離による偽腔に留置してしまった場合や径の細い部分への留置、内膜へのぶつかり、静脈弁への引っ掛かり等様々な原因があります。

自身の経験で、発生頻度としてはとても稀ですが、触知できないほどの細い血管に留置されてしまっていたりという事もありました。

これらに関して、手の間隔で針先の位置を調整することがスタンダードでしたが、現在はエコーを使用しての針先調整を行う施設が増えてきています。

エコーで確認をするメリットとして「可視化」があります。

今までは「たぶん細い血管に入っていた」、「おそらく弁に引っ掛かっていたんじゃない?」だったのが、「細い血管に入っていたから位置調整した」、「弁に引っ掛かっていたからぶつからないようにした」というように確定要素を含めるようになります。

私もエコーを使用していた経験がありますので、そのうち記事にしたいと思います。

 

4、患者体位

これは単純に「腕を曲げていた」や「腕を抑えていた」等、患者の体位起因する事象です。

どうしても横になっていたりすると腕は曲げたくなるものです。

あまりストレスにならない様、体位に気を配ってあげてください。

 

抜針事故

これまで、送血抵抗に関して上昇する原因を書かせていただきましたが、ただ1つ</u/>圧が下がる重大な事故があります。

それが、「V側外筒の抜針」です。

これは送血抵抗が下がる唯一の原因かと考えます。脱血が良好であった患者で急に静脈圧下限警報が発報した際は要注意ですので覚えていただければと思います。

しかしながら、このような患者さんに関してはある程度予測が可能なことが多いです。

シーネやグローブ、抑制などの予防措置を考慮されている段階と予想されますので、「もしかしたら」を頭の中に置いておくことが大切です。

 

まとめ

本日は透析に関わる圧力の簡易的な説明と、私の考える静脈圧の詳細を書かせていただきました。

普段、私が後輩に指導することをそのまま書いています。

不足があれば是非ご教示いただき、今後の指導にも活かしていきたいと思っております。

また、本日の内容は私の考えであり、これがすべてではないこともご了承ください。

圧力はすべてを複合した結果のみが画面に表示されていることが多いので、より細分化すると原因分析がやりやすくなります。

皆様のご理解の一助になれば幸いです。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

 

CE ガッチ