”血液透析” VAカテーテルとは? Vascular Accessの基礎(第四弾)
こんにちは、CE ガッチです。
いつも本ブログを読んでいただきありがとうございます。
ここ2,3日の天気が悪く家に引きこもってます。
これから心機一転と思い、自分の部屋を模様替えしてみたのですが、少し配置に失敗をしてイスの動ける範囲が狭くなり若干不快になりました。
また少し考えてみようかな思います。
そして、部屋配置の変更に伴いPC周りも新しいものが欲しくなってきました。
普段はノートPCで記事を書いたり仕事をしているのですが、もう少し割けるスペースが出来てきたわけです。
新しいモニター・キーボード・マウス・PC本体と夢が広がります。
そのうち執筆に関するものに関しても、記事書いてみたいです。
さて、今までの記事の流れからきまして、本日は皆様の想像通りの内容になります。
VAの分類で最後にはなるのですが、「カテーテル」について書いていきたいと思います。
本日は、基本的に長期留置カテーテルと言われている「カフ型カテーテル」について記載いたします。
非カフ型カテーテルの記載する場合は、「短期留置型~は、」もしくは「非カフ型~は」と記載いたします。
ご了承の程、宜しくお願い致します。
VAとしてのカテーテル
カテーテルには、長期留置を想定した「カフ型カテーテル」もしくは「自然抜去を阻害する構造を有するカテーテル」と、また長期での留置を想定していない「非カフ型カテーテル」の2種類に分類されます。
適応から留置部位・管理に関して、少し復習していこうかと思います。
適応
適応に関しては、このように記載があります。
GL-3:カフ型カテーテルの適応は、①AVF・AVG増設不能例、②高度の心不全症例、③四肢拘縮、認知症などによる穿刺困難例、透析中の事故抜針リスクの高い症例など患者病態から本法が最も適切なVAと考えられる症例、④小児の血液透析例などである(2-C)
引用:日本透析医学会 2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン 第3章 (5)
VAとしてカフ型カテーテルを使用する適応は上記であり、アクセスとしての最終段階と思います。また、慢性血液透析においての非カフ型に関しては、主に移植や内シャント作製までのブリッジ的な使用になります。
前者での基本適応は、
です。
動脈表在化に適応は似ていますが、この場合は返血に使用できる表在静脈が存在するかしないかがカフ型カテーテル留置と動脈表在化の別れ道となります。
ざっくりしていますが下記のようなフローになると思います。
短期留置等のブリッジ使用はこの限りではありませんが、まず作製可能であれば動脈表在化が優先されます。どうしても穿刺困難や血管の荒廃があるとの医師の判断にて、最終段階であるカテーテル留置になります。
そして、もう一つ重要な適応があります。
それは、小児領域において体重20kg未満でのアクセス選択は、カテーテルも前向きな選択肢になるという事です。
通常AVF作成には2.5mm以上の径が必要となり、目安となる体重も20kg程度以上とされています。
この事から、作製がとても困難である場合もある為カテーテルが前向き検討となるわけです。(こちらもブリッジとしての使用分類になると考えます。)
挿入部位
日本透析医学会による「2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」には下記のように記載がされています。
穿刺目標となる第一選択は右内頚静脈であり、患者の状況により左内頚静脈、右大腿静脈、左大腿静脈も選択肢となりえる。
ただし腎臓移植が予定されている患者では腸骨静脈狭窄を生じさせないため、大腿静脈からの挿入は避けることが望ましい。
という事で、第一選択が右内頚静脈となり、場合によっては逆もしくは左右の大腿静脈が選択されるという事になります。
自身の経験している10年間のうち、長期で留置されている患者さんで大腿静脈に留置されていたのは1名しかおりませんでした。
少し極端かもしれませんが、長期に関して基本右内頚静脈と捉えてよいかと思います。
挿入法
カテーテル挿入に関しては、セルジンガー法が基本になります。
セルジンガー法は、ざっくり説明しますと
です。
YouTubeに実際に挿入している分かりやすい動画がありましたので、参考として下記にリンクを貼っておきます。
ご参照ください。
https://www.youtube.com/watch?v=5Y6ns9-Gu4o
カテーテル留置部位
VA用に主に用いられるダブルルーメンカテーテルは構造として、脱血側はプロキシマール側(近位)であり送血はディスタール側(遠位)となります。
また、カテーテル留置部位に関して日本透析医学会による「2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」には下記のように記載がされています。
④カテーテルの先端位置は留置後確認する。
右内頚から挿入の場合、非カフ型であれば右上大静脈内、カフ型であれば脱血側は右上大静脈内、返血側は右房近傍に位置させることが望ましい。(2-C)
さらに留置一定期間後、先端位置の再確認も必要である。
引用:日本透析医学会「2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」第5章(5)GL-2
またカテーテル先端位置はカテーテル機能を決定する重要な要素であるとの記載もあり、留置位置はその患者さんの透析の質に直結する事となります。
実際に用いられるカテーテルの例
・テシオカテーテル(カフ付)2本のシングルルーメンカテーテル
挿入イメージはこちらです。
画像引用:株式会社 林寺メディノール・ハヤシデラ | クオリティライフを応援します。
画像引用:バスキュラーアクセス関連製品 | 製品情報 | 東レ・メディカル株式会社
・セントロスフロー(カフ付)ダブルルーメンカテーテル
此方は先端形状が特殊になっており、血管へのへばりつきをしにくくしております。
上記はVAとして使用されているカフ付カテーテルの一部になります。これら以外にも非カフ型を含めれば多様なカテーテルが存在します。
合併症
まず、カテーテルを挿入するにあたり、どの様な合併症があるのでしょうか?
留置期間で考えると、日本透析医学会 「2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」での推奨日数として非カフ型は3週間程度、カフ型はそれより長期となっています。理由としては、中心静脈狭窄の原因となる為です。ですので、3週間程度といえど非カフ型においてはなるべく短期間での留置が望ましいです。
またKDOQIでは、非カフ型に関しては入院患者に限るべきであり、その期間は1週間以内であるべきとしています。
それでは、留置後の合併症は何があるでしょうか?
大きく分けると、
です。
①脱血不良に関しては、血管へのへばりつきやカテーテル内の血栓形成・カテーテル周囲の血栓・フィブリンスリーブ・カテーテル先端の血栓形成があります。
へばりつきに関しては、体位であったりカテーテルの位置調整で改善したりするのですが、血栓に関してはそうもいきません。
これを防ぐために、基本的にはヘパリンでカテーテル内を充填していると思います。
しかしながら、それでも血栓は形成されてしまう場合があります。
そのような場合は、ウロキナーゼを充填し血栓を融解させる等の処置が必要になります。
ただ、ウロキナーゼの頻回使用は菌血症の発生率が高いとの報告もありますので、毎回の充填ではなく適宜の使用が良いかと思います。
②感染に関しては、出口部・トンネル・カテーテル内の3つの大別されます。
簡単ではありますが、いかにそれらを記載します。
出口部感染
出口部というのは、文字通りカテーテルの挿入部にあたります。
挿入部の発赤や膿、腫脹などです。
これらは抗生剤入りの軟膏を使用した局所的処置や、抗生剤の内服で対応されます。
トンネル感染
トンネル部というのは、挿入部からカフまでの範囲にあたります。
皮下トンネル部に、発赤や腫脹・硬結・圧痛が生じ、これらは通常出口部感染も伴います。
カテーテル内感染
カテーテル内感染というのは、カフ部より内側の感染になります。
カテーテル内が感染しますと、発熱や悪寒等の症状が出現してきます。他の重症な感染症の原因にもなりえる為、それらに対応する抗生剤治療やカテーテルの抜去・交換という処置に至ります。
上記を防ぐためには、適切な消毒・管理が必要になります。
大まかにではありますが、最後に消毒・管理について記載します。
消毒・管理について
カテーテル挿入部の消毒薬に関しては、CDCのガイドラインやK-DOQI2006にてクロルヘキシジンアルコール液が推奨されています。
濃度は様々なガイドラインにて何種類か推奨がありますが、基本は0.5%以上のグルコン酸クロルヘキシジンを使用するよう推奨されています。
出口部を清潔に保つことは大変重要です。
透析毎に浸出液の有無や発赤・腫脹・疼痛・かゆみ等の確認を行い、重大な感染や合併症を生じる前に対応が出来ればと考えます。
また、患者さんへの確認や出口部の保護などの対策を立て、施設ごとの感染に対するサーベイランスの実施が推奨されています。
まとめ
以上、主にカフ型カテーテルの適応・種類から管理までをずらっと記載させていただきました。
実際のカテーテル管理・処置に関しては、シャントの管理同様施設により違いが大きい部分だと思います。
しかしながら、そのような中でも基本をしっかりと学び考えながら行うか、そうでないかでは大きな違いが生じてしまいます。
本日の内容が、読んでくださる方のためになれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
CE ガッチ
参考文献:
・ 日本透析医学会 2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン
・公益社団法人 日本臨床工学技士会 専門臨床工学技士テキスト 血液浄化編 第9版
・CDC ガイドライン 2011 「血管内カテーテル関連感染防止」
参考サイト:
・医療法人 心信会 池田バスキュラーアクセス・透析・内科
・看護roo!
”血液透析” 動脈表在化とは? Vascular Accessの基礎(第三弾)
こんにちは、CE ガッチです。
気が付けば日本全国への緊急事態宣言の適応。
執筆時点でのCOVID-19感染透析患者数は累計47名(4/17の日本透析医学会公表値)。
日本透析医学会での統計調査「2018年末 わが国の慢性透析療法の現況」での死因第2位でもある「感染症」、少しも油断が出来ない状況なのは透析施設でも同様です。
着実に感染者数が伸びてる昨今、最初の宣言後まもなく2週間が経とうとしていますが状況はあまり変化している実感はありません。
全国の医療従事者の方の頑張りに感謝します。
自分も微力ながら頑張らせていただきます。
今自分のできる事、しっかりやります。
さて、本日も前回同様のシリーズ「Vascular Access」での第3弾。
「動脈表在化」に関する内容をやりたいと思います。
動脈表在化も高齢化に伴い、近年徐々に患者数が増加している傾向にあると感じます、適応から管理まで読んでいただけると嬉しいです。
新人もしくはこれから透析室で働く方、現在バリバリ働いている方も一緒に勉強できればと思います。
それではよろしくお願いします。
動脈表在化とは
「動脈表在化」とは、
であります。
表在化された動脈は脱血に使用し、送血側は通常の表在静脈を使用します。
穿刺に関して、個人的には”現在は”グレーゾーンな気がしている部分ではあります。
これは、臨床工学技士業務指針 Ⅲ-3 血液浄化業務 1・2においては
1、血液浄化装置の先端部(穿刺針)の内シャントへの穿刺及び内シャントからの抜去
2、血液浄化装置の先端部(回路チューブの接続用部分)の外シャント及びあらかじめ身体に設置されたカテーテルへの接続及び当該部分からの抜去
引用:臨床工学技士業務指針 Ⅲ-3 血液浄化業務 1・2
と記載があるからです。あくまで内シャントであり動脈ではありません。
しかしながら、日本臨床工学技士会 「2016年 臨床工学技士によるバスキュラーアクセスの日常管理指針 初版」には、上記に関し、
“血液浄化業務における「内シャント」は「バスキュラーアクセス」と読み替える”と、時代的背景で用語の変化に対応したが、動脈直接穿刺など拡大解釈の可能性もあるため「血液浄化装置のために予め用意したバスキュラーアクセス」と明記すべき課題もある。
引用:2016年 日本臨床工学技士によるバスキュラーアクセスの日常管理指針 初版
との記載もあり、タスクシフティングの要綱内にも要望として記載がありますので、あくまで”現在は”グレーゾーンになるのかなと解釈しています。
適応は
やはりこれは押さえておかないといけない部分です。
日本透析医学会 「2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」より抜粋させていただきます。
引用:日本透析医学会 2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン
- 内シャントによる心負荷に耐えられないと予想される症例。左室駆出率(EF)30~40%以下を作製の目安とする。
- 表在化静脈の荒廃により内シャント手術が困難な症例
- 吻合する適当な静脈が存在しない症例
- AVFでスチール症候群を生ずると考えられる症例、もしくはAVF(AVG)を使用していて、すでにスチール症候群を呈している症例
- AVFを作製すると静脈高血圧(ソアサム症候群)をきたすと考えられる症例、またはすでに静脈高血圧をきたしている症例
- 頻回にアクセストラブルを発生する患者のバックアップ
- 透析療法以外でも、長期に血液浄化療法を必要とする。例えば家族制高脂血症などで作製されることがある
ざざっと羅列をしてしまいましたが、AVG同様、どちらかというとセカンダリーなVAと言えるのかなと思います。
あくまで第一選択は「AVF:自己血管使用動静脈瘻」です。この中でも重要なことは、
なのかなと思います。
血管の吻合を有さない為、静脈還流量は増加せずに不変になりますので、心臓への影響はとても少ない(実際には送血がなされるので影響はゼロではないと考えられる)。
短絡による血流障害がないという事になり、VAとしてとても優秀に感じますね。
しかし、動脈の為ひとたび穿刺ミスが生じた際のリスクはとても大きいです。
内膜肥厚や狭窄などが生じた際はその末梢側の血流へ直接影響が出てしまいますので、表在血管の豊富な方や心機能への影響が許容できると予想される方等に関しては、やはり第一選択にはなりえないのかなというのが正直な感想です。
動脈表在化は心機能に影響を与えない
スチール症候群やソアサム症候群を呈さない
作製部位
表在可能な動脈は、
のずれかになりますので、作製部位は上記のどちらかになってきます。
自分は今のところ上腕での表在化しか経験したことがありません。普段内シャントの穿刺ばかりしていると動脈表在化の方の回路接続には違和感を感じるかもしれません。
その原因は、静脈の穿刺部位にあります。
動脈表在化を行っている患者さんの送血は、通常の表在静脈になります。
ですので送血部位はどうしても確保しやすい・見やすい表在の静脈、つまり肘関節部の正中静脈もしくは前腕橈側皮静脈・尺側皮静脈が多くなってきます。
という事は、回路接続の際に送血側の方が末梢になるパターンもおのずと多くなってしまいます。
なので、動静脈回路の逆接続などが発生しやすい状況と思います。
自分も含め、インシデントの発生には気を付けてください。
また、表在化の手術をした後にすぐ穿刺をすることはしてはいけません。
これは、術後すぐでは表在化された動脈と周りの組織との癒着が軽度の為、抜針時等に血腫を形成することが多いためです。
また、表在化時の創部の治癒状況も確認しなければなりません。
このようなことから、e-PTFEでのAVG同様に2週間以上(可能であれば3週間)経過後に穿刺することが望ましいです。
動脈表在化を穿刺するにあたり
表在化をされてはいますが、動脈は動脈です。
穿刺するにあたり、注意しなければならないことがあります。
まず、
です。
表在化させている部分がどのくらいあるかに起因することではあるのですが、どうしても穿刺しやすい部分に集中がしがちです。
エコー下穿刺を行ったり、時々穿刺に長けているスタッフがずらして穿刺をするなどの対策をして穿刺部を散らしていくのが望ましいかと思います。
また、動脈であるがゆえに、感染に関してもより注意深く観察をしていかないといけません。もし感染が重度になった場合は人工血管でのバイパスや置換等を行わなくてなりません。
この事から消毒もポピドンヨードを選択されることが多いのかなと思います。これは個人的には、ポビドンヨードの方が効果持続時間が長いことに起因しているのかなと考えています。
ポピドンヨードに関しては、遅効性の為時間が経過(30~60秒程度)をしてはじめて最大効果の殺菌力を発揮します。また、有機物と混ざることで活性が弱まってしまうのでしっかりと乾燥させることが大切です。
もしほかの理由がありましたら是非教えていただければと思います。
他にも、瘤や血腫の形成が認められた際にはエコー等で定期的に観察し、その径や内腔を確認し拡大がないかを評価する必要があると考えます。
まとめ
動脈表在化に関して、VAの一種ではあるのですがあくまで動脈です。
臨床工学技士として管理するべきVAではあるのですが、触ってよい部分なのかは前述のとおり現在はグレーな部分が多いので解釈が難しいです。
しかしながら、血液透析を行うためには必ず必要なものであり自分達の業務とは切っても切ることはできません。
もし、勤務されているご施設にいらっしゃるのであればしっかりと管理してあげてもらえればと思います。
そして、今日読んでいただいた内容も是非同じご施設の方と共有していただければ嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
CE ガッチ
参考文献
・臨床工学技士業務指針
・日本臨床工学技士会 「2016年 臨床工学技士によるバスキュラーアクセスの日常管理指針 初版」
”血液透析” AVGとは? Vascular Accessの基礎(第二弾)
こんにちは、CE ガッチです。
最近ブログを始めたせいなのか、パソコンのキーボードがとても気になってます。
より打ちやすいキーボードを求めて、日々Ama〇onで探していますがどれがいいのかよくわかりません。何かおすすめがありましたら教えていただきたいです。
どの様にしたらよいか、判断基準とかもあれば知りたいです。
気軽にコメントへ書いていただけると嬉しいです。
さて、前回に引き続きVascular Access:VAについて書きたいと思います。
本日の内容は「人工血管使用動静脈瘻:AVG」についてです。よく「グラフト」と呼称されているものです。
それでは、宜しくお願いします。
人工血管使用皮下動静脈瘻:AVGとは
まずはAVGとは、そもそも何なのかを復習したいと思います。
AVGとは、
になります。
AVGの方はシャント肢を見ると特徴的で、AVF(自己血管使用皮下動静脈瘻)と比べて肥厚や瘤形成が基本的にはないと思われます(ある方もいます)ので、皮下に留置してある人工血管がきれいに見てとれます。
きれいな輪を描いていたり(ループ形)や前腕から真っ直ぐ上腕にかけてバイパスしていたり(ストレート型)します。
看護roo!さんに良い画像がありましたので、引用させていただき以下にその一例をしまします。
引用:バスキュラーアクセスの種類と特徴|透析ケア|看護roo![カンゴルー]
経験上、留置はやはり非利き腕の前腕ループが多い気がしています。
しかしながら、最近前腕から上腕へ掛けてのストレートグラフトも増えてきています。
おそらくその時期により先生方の流れがあるのかなとも考えられます。
勿論、前腕だけではなく上腕の方もいらっしゃいましたし、大腿部にいれている方もおられました。
適応は?
あくまで内シャント作製の第一選択は「自己血管使用皮下動静脈瘻:AVF」になります。
では、AVGの患者さんはどのような方でしょうか?
AVG適応の方は、
になると考えます。
また、絶対条件として心機能に問題がない(シャント作製に耐えられるかを事前評価が望ましい)ことが必要です。
心機能に対して明確な数値等はないと思われますが、日本透析医学会 「2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」には以下のように記載があります。
第4章 バスキュラーアクセスの日常管理 (4)心機能とアクセス GL-1
動静脈を短絡するVA(AVF・AVG)は心機能に影響を及ぼす。VAの動静脈短絡量が心機能(心予備脳)に比べて過剰である場合、心不全が出現することを認識すべきである。
(解説抜粋)新たにAVF・AVGを作製すると、心拍出量に対し末梢血管抵抗が低下し、心臓が心拍出量を増加させることで血圧を保ち、末梢循環を維持する。
短絡量が心臓の予備能(最大心拍出量)に比して相対的に大きい場合、シャント血流の増加に心拍出量の適切な増加が困難となり、全身循環が阻害される循環障害系の心不全が発症する。
また、シャント血量が多い状態が持続することで(貧血や甲状腺機能亢進症に認められるような)、高心拍出量性心不全を呈する。
この心不全も心機能が低いほど発症しやすい。
AVGの作製には、上記の事を踏まえシャント作成時での心予備能を推測し、どの程度のシャント血流量を得られるか等を予測しながら作成を行うという事ですね。
動静脈の短絡は、人体にとっては非生理的なことです。
短絡により、一部の血液が短絡ヶ所より末梢側を経由せずに心臓へ戻ります。つまり、血液が戻りやすくなり、末梢血管抵抗の低下へとつながるわけです。
血圧は心拍出量×末梢血管抵抗で表すことが出来ます。
上記の式から、末梢血管抵抗が低下したという事は、血圧を保つために心拍出量を増加させなくてはいけないわけです。
心拍出量が増加するという事は還流量が増加、受け皿である右心系への負担が大きくなり、結果的には許容を超えてくる又は常に高還流にさらされることで心不全を呈しやすくなるという事になります。
AVGの適応は、血管の荒廃や穿刺困難等の二次的要素が多いです。
しかし、導入年齢の増加や患者の高齢化が進みAVGの患者さんが増加しているのも事実です。
今後は患者ケアも含め管理しなくてはいけない世の中になりそうです。
素材
現在、日本にて使用可能な人工血管の素材は以下の3種類があります。
挿入する主な人工血管のサイズは、
1、直径が5mmもしく6mmのストレートグラフト
2、動脈側4mm、静脈6mmもしくは7mmのテーパードグラフト
です。
それでは次にそれぞれの特徴を個別にみていきたいと思います。
e-PTFE(Expanded-polytetrafluoroethylene)
e-PTFEは、テフロンを熱を加え伸展加工し作製される人工血管です。
抗菌性や長期開存性、操作性において優れていることが報告されています。(1)
PU人工血管と比較をしても開存率は良好であったという報告もあります。(2)
しかしながら、血管壁からの血清漏れにより生じる血清腫が術後約5%の頻度で出現します。
現在では、血清種のリスク減少の為コーティングがされたものも発売されています。
穿刺開始に関しては、術後2~3週間を必要とします。
これは、人工血管が周囲の組織としっかりと癒着をしてから穿刺を行わなくてはならないからです。
e-PTFEは自身での止血機構を有さないため、組織との癒着をし始めて止血機能が働きます。つまり、穿刺はできても止血が難しくなってしまうからです。
エコーでの観察も早期から可能になり、血管壁もしっかりと描写されます。
PU(Poly-urethane)
PUは3層構造を有していて、その中層に弾性による止血機構(セルフシーリング機構)を有しています。
このため、挿入後早期に穿刺が可能です。
しかしながら、他と比較するとその固さのために屈曲がしやすいというデメリットがあります。
エコーでの描写に関して、挿入早期では難しいことが多いです。
これは、三層構造中の外膜にあたる部分が早期癒着を目的とした多孔質構造をしている為、空気を含んでしまっていることに起因します。
穿刺を繰り返すことにより、癒着が進み描写が可能になってきます。
PEP(Polyolefine-Elastmer-Polyester)
PEPもPU同様に3層構造を有しています。
また、セルフシーリング機構も有している為、癒着を待たず早期の穿刺が可能になります。
エコーに関しては、早期から観察が可能なことが多いです。
これら3種類の特徴を表にしたものが看護roo!さんのHPにありましたので引用させていただきます。
消毒に関して
皆さんのご施設では、人工血管の消毒にはどの薬剤を使用していますでしょうか?
自施設では基本的にはポピドンヨードを使用し、どうしても皮膚に合わない患者さんの場合は0.5%クロルヘキシジン含有アルコール製剤を使用しています。
消毒法に関しましては、様々なご施設の考えや医師の考えがございます。
自身も患者の皮膚状態や合う、合わない等により使い分けをしています。
消毒に関しましては、興味深い論文もございましたので紹介します。
「府川真理子 操華子:バスキュラーアクセス部に使用されている皮膚消毒剤の実態ならびにその選択の関連要因 (日本環境感染学会 会誌 Vol30 no2 2015)」
興味ある方は読んでみてください。
まとめ
今回はAVGに関して、基本となることを書かせていただきました。
特徴がわかれば、対処がしやすいこともあるかと思います。
管理も基本は理学所見であり、日々の観察になります。
色々と書かせていただきましたが、参考にしていただけますと幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
CE ガッチ
参考文献
・1)久保田和丘・川村明夫:人工血管の選択と新素材、透析患者の合併症とその対策(日本透析医学会 合併症対策委員会編17:41-47 2008)
・2)柳清 洋佑 ほか:当院における早期穿刺可能な透析用人工血管の開存成績比較:SHORATEC® vs. ADVANTA®(日本血管外科学会 会誌 20 1-6 2011)
・社団法人 日本透析医学会:2011年版 慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン
・公益社団法人 日本臨床工学技士会 「専門臨床工学技士テキスト 血液浄化編 第9版」
参考HP