”血液透析” 分子拡散について
こんにちは、CE ガッチです。
新年度となり、新しく後輩が出来た方もいると思います。
新入社員の方は1週間が過ぎましたが、どうでしょうか?
現場のリアルな雰囲気や、他の医療職種の方や患者さんとのコミュニケーションとたくさんの困惑する部分はあるかと思いますが、その中で自分が何をもってどのようになっていきたいかをゆっくりと考えていってみてください。
やっていく上で「自分の軸」が少しでも見えてくると、仕事をしていて気持ちの入り方が変わってくるかと思います。
本日は、血液透析に従事している臨床工学技士のブログとしてまずは外せない内容であります。
血液透析の中でも基本の原理である「分子拡散と限外濾過」のうちの「分子拡散」について書いていきたいと思います。
自分たち臨床工学技士に関しては、学生の頃に勉強をしている内容ですので復習がてら読んでいただければ嬉しいです。
この4月から透析室に新しく配属になった看護師等の方もいらっしゃると思います。
それらの方々へも是非勧めていただき、読んでもらえれば嬉しいです。
分子拡散について
分子拡散とは
溶液中にある溶質(ある溶液に溶けている物質)はその濃度が不均一な状態にある場合、濃度の高い方から低い方へ自発的に動き、溶質の濃度を均一にしようとする働き
になります。すごく硬い文章ですね。
もう少し簡単な文章で言うと、
溶けている物質は、濃度を同じにしようとして溶液全体へ拡がっていく
という事です。
この時の推進力はそれぞれの濃度差になります。
動きとしては、
という動き方をします、このような動きによって濃度が平均化されていくわけです。
そして、拡散速度は分子量に反比例します。
つまり、分子量が大きくなればなるほど拡散速度は”遅く”なります。
具体例は?
日常的かは分かりませんが、牛乳にコーヒーを混ぜようとした時に混和しなくても全体へ万遍なく拡がっていき均一になりますね。
これが「分子拡散」という現象になります。
分子拡散という現象に関しては、液体のみならず気体や固体でも起きます。
気体であれば、煙などは空気に混ざります。
無くなって見えるのは、空気の容積が煙のそれに対して大きすぎる為です。
固体であれば、金属の熱伝導等です。
一か所しか熱していなくても、金属は全体が温まります。これは熱量が拡散し均一な温度になろうとしている為です。
分子拡散というものは、案外身近にあるものなのです。
血液透析では
どうでしょうか?
血液透析における分子拡散現象は、血液と透析液の間で起きています。
透析患者さんの血液中には、腎臓で排泄を行っていたものがどうしても蓄積してしまいいます。
水分やBUN(尿素窒素)やCr(クレアチニン)、K(カリウム)等ですね。
水分に関しては分子拡散ではなく「限外濾過」という形になりますのでまた次回にでも詳しく書かせていただきます。
という事で、BUNやCr、Kなどを「分子拡散」の原理を使用し外へ出していくわけです。
蓄積したものは濃度が高くなっています。
という事は、透析液側の濃度をゼロ又は目標濃度(血中濃度より低い)にすればその濃度に向かい移動していきます。
濃度ゼロ→循環している間は外へ出続けていく
目標濃度→蓄積物の血中濃度はその濃度に近づこうとする
大切なのは、透析液側の濃度が血液側の濃度よりも低いという事です。
これらにより、血液中に蓄積したものを外へ出してあげるわけです。
とここまでで済めばよいのですが、血液中には外に出したくない物質もあります。
具体的に言えばALB(アルブミン)や血球・血漿成分(赤血球や白血球、血小板など)などです。
ですので、その部分を外に出さないようにするための”仕切り”が必要になってきます。
これが「透析膜」になります。
ダイアライザーやヘモダイアフィルターの中にある細いストローみたいなもの一本一本がその膜により作られています。
この透析膜は、「限外濾過」をする際にもとても重要な役割を果たしています。
限外濾過を行うためには膜が必要になります。
この事は、また別記事で詳しく書かせてもらえればと思います。
話を戻しますが、ここで外に出してよい物質とダメな物質をふるい分けをする膜「透析膜」が必要になってきます。
このふるい分けをす為、透析膜には1nm(ナノメートル)オーダーでの小さい穴が無数の開いています。
この穴の開き方についても特徴がありますので、時間を見つけて記事にしたいと思います。
このように透析膜は、ある一定の大きさのものまでの分子やイオンを透過する膜であり、それらを「半透膜」(注1)と呼びます。
まとめると,
血液透析では、「半透膜を介して血液中に蓄積した老廃物を分子拡散の原理を利用して透析液側へ移動させて除去という形で外に出している」ということですね。
最後に
今回は、血液透析の原理の一つである「分子拡散」についてかかせてもらいました。
この動きを理解してるかいないかで、血液透析の理解度は随分変わってくるかと思います。
小難しい話にはなってしまいますが、是非覚えてもらえると嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
CE ガッチ
(注1):